東京都内在住の女性が、NHKから業務委託されている業者から受信料の集金を受けた際、執拗なチャイムとノックで呼び出され、精神的苦痛を感じたとして、集金に来た男性従業員と業者にそれぞれ慰謝料10万円を求めた裁判で、10月26日、東京地裁は女性の請求を棄却した。
裁判では原告、被告ともに客観的な証拠がなく、証人尋問での証言の内容が争点になっていた。訴状などによると、原告の女性は2015年1月8日、男性従業員が「呼び出しのチャイムを計10回鳴らし玄関ドアをどんどんと叩き」、「支払いを求めて玄関の中に足を踏み入れ」、受信料の支払いを強いたと主張。女性はクレジットカードで受信料10万610円を支払ったが、男性従業員の取り立て行為に強い恐怖や不安を感じたという。
一方、男性従業員側は取り立て行為について「終始原告の玄関に立ち入ることなく、穏やかかつ丁寧な姿勢で未納となっている受信料の支払い手続等を進めた」などと主張していた。
東京地裁の脇博人裁判長は判決で、「原告の供述には裏付けが無い」と指摘。男性従業員の取り立てについては「社会的相当性を逸脱した態様によるものとはいえず、脅迫や強迫があったとは言えない」などとして、女性の請求を退けた。
判決後、女性の代理人の斎藤悠貴弁護士は東京・霞が関の司法記者クラブで記者会見を開き、判決について、「今回のような客観的な証拠がない事案で、尋問をほとんど考慮することなく結論を出している」と批判した。原告は控訴を検討している。