経営破綻した旅行会社「てるみくらぶ」が、粉飾決算を繰り返し行なっていたことが3月29日、破産手続き開始申立書で明らかになった。報道によると、同社は2014年9月期から営業損益が大幅な赤字となっていたが、販管費や売上原価などの経費を過少に計上し、決算書上は黒字に見せかけていたという。
最後の決算となった2016年9月期は、決算上は1億1000万円の黒字に見えたが、実際には15億円以上の赤字だった。4億5000万円としていた純資産についても、74億円の債務超過に陥っていた。
また、銀行向けや税務署向けなど、提出先によって内容の異なる決算書を複数作成していた。さらに、同社は旅行サービスに提供すべき旅行代金の前受け金約100億円を、広告代金など他の支払いに回し、破産時には手元に約2億円しか残っていなかった。
不正な会計処理を行い、実際とは異なる決算書類を作成する「粉飾決算」はどのような法的問題があるのだろうか。会社法に詳しい大和弘幸弁護士に聞いた。
●「てるみくらぶの決算処理は、粉飾決算に該当する」
「粉飾決算とは、会社が、意図的な会計操作によって、架空の決算利益を計上する決算をいいます。報道によれば、株式会社てるみくらぶの行っていた決算処理は、まさに粉飾決算に該当するでしょう」
どのような法的問題があるのだろうか。
「株式会社は、それ自体に法律が人格を与え、取引主体となることを認めるもので、役員や株主個人は、原則として会社の債務を負担する義務を負いません。だからこそ、会社の経営状況や財務状態が正しく開示されることが極めて重要です。
会社法は、株式会社の会計は一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行に従う、と定めています。会社の財産・損益の状況を明らかにする計算書類は、事実に即して(真実性の原則)、整然かつ明瞭に(明瞭性の原則)作成されるべきことは当然です」
●「粉飾決算がなければ、被害の拡大を防ぐことができた」
正しい決算報告をしていれば、被害はうまれなかったのだろうか。
「てるみくらぶは第一種旅行業者として平成11年2月から観光庁長官に登録されています。登録が認められるためには一定の財産的基礎基準を満たす必要があり、そのため、登録時及び登録更新時に貸借対照表等を観光庁に提出します。また、旅行業者は毎年、取引額報告書を提出する義務があります。
報道によると、顧客からの旅行代金前受金が約100億円であるとのことです。しかし、弁済業務補償金制度に基づき、申し立て者に対して弁済する日本旅行業協会(JATA)の保証金は1億2000万円にとどまるとのことで、ほとんど回収が見込めません」
裁判によっても回収は難しいのか。
「顧客は残代金債権を裁判所に届け出ることになりますが、破産手続においては一般の破産債権として取り扱われ、財団債権や優先的破産債権のように優遇はされません。したがって、破産手続においてもほとんど配当は期待できないと思います。
仮に、粉飾決算がなかったとしたら、てるみくらぶの赤字状況はより早い段階で監督官庁が把握できたかもしれませんし、業務停止処分などによってより被害の拡大を防ぐことができたかもしれません。てるみくらぶの経営者の責任は極めて重いと思います」