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「このハゲー!」絶叫の豊田議員、元秘書が被害届提出…どんな法的問題に発展する?
豊田氏の公式HPより

「このハゲー!」絶叫の豊田議員、元秘書が被害届提出…どんな法的問題に発展する?

自民党に離党届を提出した豊田真由子衆院議員の元秘書の男性が7月6日、豊田氏から暴行を受けたとして埼玉県警に被害届を提出した。

「週刊新潮」が公開した音声や記事によると、豊田氏は元秘書が運転中の車内で、後部座席から、元秘書に対して「このハゲーーーっ」、「バカかお前は?」などと暴言を浴びせ、頭や顔を殴ってけがをさせたという。男性は、6月27日に県警を訪れて、相談していた。

報道によると、被害届を受理した埼玉県警は、今後豊田氏を傷害容疑で捜査するという。豊田氏の行為は法的にはどのような点が問題となるのか。刑事だけでなく、民事上の責任を負う可能性はあるのか。秋山直人弁護士に聞いた。

●侮辱罪と名誉毀損罪は「公然と」の要件があるので、成立しない

刑事面では、豊田議員の暴行によって元秘書の方が頭や顔にけがを負ったということですと、傷害罪(刑法204条/15年以下の懲役又は50万円以下の罰金)が成立することになります。

「このハゲーーーっ」「バカかお前は?」と罵ったとの点については、侮辱罪(刑法231条/拘留又は科料)も問題になりますが、侮辱罪は「公然と」人を侮辱した場合に成立する罪であり、今回は豊田議員と元秘書との2人しかいない運転中の車内での発言とのことですから、侮辱罪は成立しないでしょう。名誉毀損罪についても、同様に「公然と」の要件がありますので、成立しないでしょう。

●民事ではパワハラとして不法行為が成立するので、損害賠償請求も可能

民事面では、議員と秘書という職務上の上下関係を背景に、人格を否定するような内容の罵倒をしたり、軽微なミスを必要以上に責め立てたり、暴行を加えて怪我をさせたということであれば、いわゆるパワハラにあたり、不法行為(民法709条)が成立して、治療費・慰謝料等の損害賠償の請求ができるでしょう。

被害届が既に受理されており、警察が捜査に動くとのことですから、社会的立場のある議員側としては、刑事・民事面を含めた示談を被害者側に申入れ、謝罪の上で、示談での速やかな解決を図ろうとすると予想されます。

もっとも、仮に被害者との間で示談が成立しても、豊田議員が社会的に失ったものは相当に大きいですね。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

秋山 直人
秋山 直人(あきやま なおと)弁護士 秋山法律事務所
東京大学法学部卒業。2001年に弁護士登録。所属事務所は四谷にあり、不動産関連トラブルを中心に業務を行っている。

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