「トップレスの女性を逮捕してはならない」——。ニューヨーク市警が所属警官3万4000人にそんな指示を出したとニューヨークタイムズが5月に報じ、大きな話題になった。
実は以前からニューヨークでは、女性が公衆の面前で胸をあらわにしても違法ではないとされていた。今回は、そのことが警察組織の中で再確認されたというわけだ。アメリカには「Go Topless」というトップレスを推進する市民団体もあり、女性が公の場で上半身裸になることは憲法で保障された権利だと主張している。
では、日本ではどうだろうか。女性が道路や公園など公共の場所で上半身に何もつけないでいた場合、何かの罪になるのだろうか。それとも、日本でも「女性がトップレスになる権利」は認められていて、何のおとがめもないのだろうか。田中真由美弁護士に聞いた。
●トップレスは「公然わいせつ罪」ではないようだが・・・
「大勢の前で乳房を見せても、刑法174条の『公然わいせつ罪』にはあたらないと言われています」
田中弁護士はこう切り出した。
「それでは、わいせつな行為とは何なのでしょうか。条文はわかりにくいので、かなりかみ砕いていうと『本人や他人の性欲を刺激したり、興奮させたり、満足させたりする』行動のうち、『普通の人が恥ずかしく思ったり、道義的に問題だとされるもの』がそうだとされています。具体的には、性器を見せたらこれに当たりますが、乳房を見せるのは大丈夫だと言われています」
では、日本でも「トップレス」は認められているのか。
「いえ、そうとは言えません。日本の警察は1964年7月、トップレスを『軽犯罪法第1条20号』で取り締まる方針を出しました。この法律の条文では『公衆の目に触れるような場所で公衆にけん悪の情を催させるような仕方でしり、ももその他身体の一部をみだりに露出した者』が、拘留や科料の対象となるとされています」
あっちではOK、こっちではダメで、ずいぶんややこしい。いったい誰が判断しているのか。
「裁判所ですね。法律の条文は、その時点での日本社会の文化的背景をもとに解釈されます。だから、もし今後トップレス行為について裁判が起き、トップレス行為がこの条文に該当しないという判決が積み重なれば、結論は変わってきます」。田中弁護士はそう話していた。