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手口が巧妙化する「振り込め詐欺」 振込先の口座を凍結することは可能か
「振り込め詐欺」は手口が巧妙化しているという

手口が巧妙化する「振り込め詐欺」 振込先の口座を凍結することは可能か

電話などを使って身内や警察などを装い、金銭をだまし取る詐欺方法。当初は、「オレオレ詐欺」という名称が有名だったが、その後、手口が巧妙化し、2004年から警視庁は「振り込め詐欺」という名称を使い始めた。さらに近年は、およそ7割が現金を「手渡し」させる手口となり、「振り込め詐欺」という呼び方では、実態を表現できなくなっているという。

このような中、警視庁は「振り込め詐欺」の新たな名称をツイッターで募集。4月10日の締切りまでに1万件を超える応募があったそうだ。最も応募が多かったのは、「なりすまし詐欺」。犯人は身内を装い現金を要求するためだ。ほかにも、要求された側を混乱に陥れるから「パニック詐欺」、そしてお金を受けると消えるから「金とともに去りぬ詐欺」などの応募があり、裁判ウォッチャーで知られる芸人の阿曽山大噴火さんは、詐欺集団が一芝居打ってお金を騙しとるところに注目したのか、「劇団詐欺」と応募したという。

いずれにせよ、「パニック」は被害者にとって偽らざる心情だろう。身内から事件に巻き込まれたと連絡があれば、まず動転する。よかれと思い現金を振り込み、「安心してね」と当人に連絡を取ったところで詐欺とわかり、さらなるパニックに陥る。そのまま銀行の窓口で相談すればいいのか、警察に通報するのか。何かをどうすればいいのかわからない。

このような詐欺で、口座に現金を振り込んでしまった場合、被害者はまず何をしたらいいのだろうか。振込先の口座を凍結させるなんてこともできるのだろうか。相沢祐太弁護士に聞いた。

●「振り込め詐欺」に気づいたら、すぐに銀行に連絡すべき

「詐欺被害に気付いたタイミングにもよりますが、まずは、直ちに、振込手続を行った銀行等に連絡し、被害を申告するとともに、振込の停止や組戻しを求めてみることです」

相沢弁護士はこのようにアドバイスする。組戻しとは、誤って振り込んでしまった場合に、銀行等に依頼して取消しの手続きをしてもらうことだ。

「相手の口座への振込みが完了してしまった場合には、その口座名義人の同意が必要になるので、通常は組戻しを受けられませんが、もし間に合うのであれば、最も簡単に被害の回復を図ることができます」

では、組戻しができない場合はどうすればいいのだろう。

「その場合は、詐欺という犯罪行為に利用された銀行口座であるということで、銀行等に対し、口座の『凍結』を要請して、加害者等が出金できないようにすることが必要です。その際は急いで、弁護士に依頼することが重要です」

相沢弁護士によると、自分で申し込むよりも、弁護士に頼んだほうが手続きが早く進む可能性が高いという。

「被害者本人が申し出た場合、通常、銀行等が凍結の適否を判断するまでに一定の時間が掛かります。しかし、被害者の依頼を受けた弁護士が所定の書式にて申し出を行った場合には、多くの金融機関において、速やかに凍結されることになっています」

●口座が凍結できれば「振り込め詐欺救済法」の手続きにより、被害金の分配を受けられる

振り込んでしまった口座の凍結ができた後は、どのような流れになるのだろう。

「口座の凍結ができた場合には、いわゆる『振り込め詐欺救済法』の手続にしたがって、口座名義人の権利を喪失させた上で、残高から分配を受けることができます。通常の訴訟や強制執行によって回収することも可能ですが、費用や労力を考慮すると得策ではないかもしれません」

ちなみに、このような口座凍結の対処法は、「振り込め詐欺だけでなく、恐喝やヤミ金被害の場合でも可能です」ということだ。

このように振り込め詐欺にあってしまった場合でも、すぐに対処して、「組戻し」を要請したり、「口座の凍結」を申し込んだりすれば、水際で被害を食い止めることができる場合があるということだ。ただ、凍結を迅速に実施してもらうためには、弁護士に相談するのがよい場合が多いといえるだろう。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

相沢 祐太
相沢 祐太(あいざわ ゆうた)弁護士 ふじ総合法律会計事務所
主な論考等「いわゆる近接所持の窃盗事件について無罪とされた事例」(大阪弁護士会刑事弁護委員会『刑弁情報』第40号)

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