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「17歳の母」トイレで出産した乳児を殺害して遺棄ーー「父」の刑事責任は?
子の親は母だけではない・・・

「17歳の母」トイレで出産した乳児を殺害して遺棄ーー「父」の刑事責任は?

生まれたばかりの我が子を殺害、遺棄したとして福井市内に住む少女(17)が2月11日、逮捕された。報道によると、少女は2月4日、自宅トイレで出産した女児を殺害し、市内の土手に遺棄した疑いがもたれている。少女は未婚で、同居する家族は少女の妊娠に気づいていなかったという。

しかし、何か釈然としない思いも残る。母親はまだ17歳だ。そして、妊娠したならば当然「父親」がいるはず・・・。殺害した事実はもちろん言語道断ではあるが、「父親」はいったい何をしていたのか。少女だけが一身に罪をかぶることになってしまうのか。

刑事事件にくわしい坂野真一弁護士に聞いた。

●「父親」に刑事責任はないのか?

「刑法上は、母体から胎児が一部でも露出すれば、殺人罪(刑法199条)の客体である『人』といえます。報道がすべて事実だとすれば、本件の場合、赤ちゃんが生きて生まれているのですから、母親の少女(以下「少女A」)は殺人罪・死体遺棄罪に該当する行為を行っていることになるでしょう」

赤ちゃんの父親は、何かしらの罪に問われないのか。

「そういった素朴な疑問を持つ方もいるでしょう。では、なんとか父親の刑事責任を問えないかとの観点から考えてみます。

たとえば、赤ちゃんの父親(以下「男性B」)が出産前、少女Aに対して、生まれたら殺してしまおうか等と言っていた場合です。

少女Aが男性Bの発言によって赤ちゃんの殺害を決意したり、すでに殺そうと思っていた気持ちをさらに強めたのであれば、男性Bは殺人罪の教唆犯・幇助犯に問われる可能性はあります。ただ、実際には、刑事裁判で検察側が有罪立証することは難しいと考えます。

また、少女Aの合意なしに男性Bが性交していた場合、その行為は強姦罪に該当する可能性が出てきます」

●青少年愛護条例に違反の可能性も

では、性交には合意があったものの、妊娠を知った男性が、出産前に逃げてしまった場合はどうだろう。

「少女Aの出産後の行為に全く関与していませんから、刑法上の責任を男性Bに問うことは困難と考えます。

ただし、少女Aは17歳ですから、未婚である場合、福井県青少年愛護条例35条1項により、少女Aに対するみだらな性行為は禁止されています。AB間の性交が、男性Bが少女Aを、単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないような性交であった場合には、男性Bは、上記条例違反として2年以下の懲役または100万円以下の罰金に処せられる可能性があります」

坂野弁護士はこのように話していた。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

坂野 真一
坂野 真一(さかの しんいち)弁護士 ウィン綜合法律事務所
ウィン綜合法律事務所 代表弁護士。京都大学法学部卒。関西学院大学、同大学院法学研究科非常勤講師。著書(共著)「判例法理・経営判断原則」「判例法理・取締役の監視義務」「判例法理・株主総会決議取消訴訟」(いずれも中央経済社)、「増補改訂版 先生大変です!!:お医者さんの法律問題処方箋」(耕文社)、「弁護士13人が伝えたいこと~32例の失敗と成功」(日本加除出版)等。近時は相続案件、火災保険金未払事件にも注力。

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