未成年者を狙う性犯罪事件が、繰り返し報じられている。12月上旬には、中学3年生の少女に「みだらな行為」をしたとして、陸上自衛隊陸士長の男性(22)が、群馬県青少年健全育成条例違反の疑いで逮捕された。
同じころ、12歳の女子中学生に「わいせつな行為」をしたとして、無職の男性(34)が強制わいせつの容疑で福岡県警に逮捕されたことが報じられている。
このように、新聞やテレビのニュースでよく目にする「みだらな行為」と「わいせつ行為」。どちらも「いやらしいことをしたんだな」という想像はできるが、具体的な違いがよくわからないという人も多いだろう。
「みだらな行為」と「わいせつな行為」という報道の表現は、どこがどう違うのだろうか。また、罪の重さに差はあるのか。元新聞記者という経歴をもつ長谷川 裕雅弁護士に聞いた。
●報道は「書き分け」ている
「今回の最初の事例では、青少年保護育成条例違反の行為を『みだらな行為』と表現しています。
また、『わいせつな行為』という表現は、刑法176条の強制わいせつ罪について報じる際に用いられていますね。
たしかに似ている表現ですが、報道における書き分けは、条文上の言葉をそのまま反映したものになっているようです」
長谷川弁護士はこのように説明する。法律や条例の言葉の違いということだが、具体的にいうと、どういうことだろう。
「『みだらな』という言葉は、各地の青少年条例に登場する言葉です。
たとえば、東京都青少年健全育成条例の18条の6では、『何人も、青少年とみだらな性交または性交類似行為を行ってはならない』と規定しています。
『みだらな行為』というのは、これのことでしょう」
では、「わいせつな行為」とは?
「そちらは、刑法の言葉です。強制わいせつ罪を定めた刑法176条には、『暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は・・・』(刑法176条)という一節があります」
二つの「行為」の実際上の違いは何だろうか?
「大きな違いは、青少年条例のみだらな行為は『性交を含む』のに対して、刑法176条のわいせつな行為は『性交を含まない』という点です。
暴行や脅迫を用いて性行為に至った場合には、強姦罪という別の犯罪になります」
●罪名だけでは「罪の軽重」はわからない?
では、罪が重いのはどちらか?
「法律上は、『わいせつな行為』(6ヵ月以上10年以下の懲役)のほうが、『みだらな行為』(東京都の場合2年以下の懲役又は100万円以下の罰金)よりも、罪が重いとされています。しかし実際には具体的な事案の中身を見ないと、どちらのほうが罪が重いか判断できません。
たとえば、13歳以上の未成年に対するわいせつ行為で、同意がなければ『強制わいせつ』になり、同意があれば『みだらな行為』をしたとされます。ただ、その判断はときに難しく、それぞれの刑罰の内容も幅が広いため、事案や状況によっては『みだらな行為』をした場合のほうが罪が重いこともあります。
事件には個性があります。事件の詳細を見ずに、一概に罪名だけで罪の軽重を比較することはナンセンスです」
報道では、性犯罪行為を「いたずら」「暴行」などと表現することもある。こうした書き分けについて、元新聞記者の長谷川弁護士は次のように指摘していた。
「『いたずら』は、犯罪行為を軽く見せようとする加害者側の意図に沿うものとして、報道では使うべきではないとする新聞社もあります。同じく『暴行』についても、事件の凶悪性をあいまいにするとの理由で、使用するべきではないという意見もあります」