5人組の女性アイドルグループ「#ババババンビ」のメンバーに「GPS発信機」とみられるものが送られ、所属事務所は「許し難い犯罪行為」と厳しく非難した。
標的になったのは、メンバーでグラビアアイドルの岸みゆさんだという。所属事務所は3月10日、岸さん宛のプレゼント包装に「GPS発信機のようなものが仕込まれたという事件が発生」したと公式サイトで公表。すでに警察が仕込んだ人物を特定したという。
「今後も犯罪行為に該当するものは行政機関への報告を行うことをお伝えいたします」(事務所)
この2月にも、VTuberグループ「あおぎり高校」の所属VTuber宛のプレゼントにGPS発信器が隠されていたと発表されていた。こちらについては、運営会社は顧問弁護士と協議のうえで、刑事告訴を検討したという。
アイドルにGPS発信機を送りつけるだけでも、罪に問われる可能性があるのだろうか。刑事事件にくわしい澤井康生弁護士に聞いた。
●「ストーカー行為罪の対象ともなる」【弁護士の解説】
——GPS発信機を仕込ませたものを他人に送りつけたり、それを持ち帰らせて自宅住所などの位置情報を不正に入手したりすると、どんな罪に問われますか
特定の相手への恋愛感情やその他の好意の感情を充足する目的で、GPSを用いて位置情報を無断で取得すること(位置情報無承諾取得)は、法改正によって2021年8月からストーカー規制法で禁止されました(3条)。
具体的には、相手のGPS機器の位置情報を無断で取得する行為(2条3項1号)や相手の持ち物に無断でGPS発信機を取り付ける行為、GPS発信機を取り付けた物を相手に差し入れる行為(2条3項2号)が「位置情報無承諾取得」に該当します。
これに違反した場合、警察署長は行為者に警告や禁止命令を出すことができます。
行為者が禁止命令に違反してストーカー行為をおこなった場合、2年以下の懲役または200万円以下の罰金に処せられます。
このような「位置情報無承諾取得」の行為を反復すれば、「ストーカー行為」に該当し(2条4項)、ストーカー行為罪として1年以下の懲役または100万円以下の罰金に処せられます。
これを今回のケースにあてはめてみると、アイドルへのプレゼントにGPS発信機を仕込んで渡すことは、「位置情報無承諾取得」の行為に該当します。
これが1回おこなわれただけであっても、この段階で警告や禁止命令を出すことができます。
さらに、反復していれば、ストーカー行為罪が成立するので、刑事告訴して立件することも可能です。
行為者が禁止命令に違反してまでストーカー行為をおこなった場合も同様です。
アイドルの位置情報を取得するまでに至らなくても、相手の持ち物にGPS発信機を取り付けたり、GPS発信機を取り付けたもの(プレゼント)を交付したりするだけでも違法行為となります。
知らなかったでは済まされないので、そのような行為は絶対にしないようにしましょう。