インターネット通販サイト「楽天市場」に他人のIDとパスワードでアクセスし、他人が貯めたポイントを「盗んで」電子マネーに換金したとして、昨年12月、中国人大学生2人が不正アクセス禁止法違反の疑いなどで逮捕された。
報道によると、2人は容疑を認め、「インターネットで知り合った中国人から、約160万件のIDやパスワードを買った」「電子マネーで紙おむつを大量に購入し、中国に輸出していた」などと供述しているもよう。被害者は約250人、被害額は約300万円分に及ぶとみられている。
他人のお金を盗ったら「窃盗罪」になるが、他人が貯めたネットサービスの「ポイント」を「盗む」ことはどんな罪とされるのだろうか。伊藤諭弁護士に聞いた。
●他人のIDやパスワードでログインすれば「不正アクセス」に
「まず、他人のIDとパスワードを使って、サーバなどにログインする行為は『不正アクセス行為の禁止等に関する法律』(不正アクセス禁止法)における『不正アクセス』にあたります。これは3年以下の懲役または100万円以下の罰金となります。
不正アクセスというと、ハッキングなど大げさな犯罪を想像されるかも知れませんが、たとえば友人のIDとパスワードを勝手に使って、不正にサーバにアクセスしてメールを盗み見る等の行為もこれにあたります」
伊藤弁護士はこのように話す。それでは、不正アクセスをしたうえで、他人のネット上の『ポイント』を盗んだらどうか?
「他人のポイントを不正に『盗む』行為は、刑法の『電子計算機使用詐欺罪』にあたります。この場合の法定刑は、10年以下の懲役になります。
実は、似たケースでは、他人のクレジットカード情報を使って電子マネーを取得した行為がこの電子計算機使用詐欺罪にあたるか、ということが裁判で最高裁まで争われたことがあります」
●キセル乗車も「電子計算機使用詐欺罪」になりうる
その裁判では、どんな点が争われたのだろうか?
「電子計算機使用詐欺罪では、電子計算機(コンピューター)に対して、『虚偽の情報や不正な指令』を与えて、財産の権利関係を変更させるようなニセの電磁的記録(データ)を作り出すことが問題になります。
この裁判では、被告人は《他人名義のカード情報は『虚偽の情報』ではないから、同罪は成立しない》という主張をしていたようです。
しかし最高裁は、他人のクレジットカード番号をコンピューターに入力すれば、その名義人本人が電子マネーの購入を申し込んだという『虚偽の情報』をコンピューターに与えたことになると判断し、同罪の成立を認めました」
他人のIDやパスワードを使ってサイトに接続し、ポイントを盗んで電子マネーに交換することも、同じような枠組みで考えられそうだ。
伊藤弁護士は「この犯罪にはいろいろなパターンがあり、変わったところでは、自動改札を使った『キセル乗車』でも同罪が成立すると認められた事案もあります」と話していた。