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刑事施設でコロナ感染相次ぐ 「速やかに釈放を」NPO団体が安全確保を求める
海渡雄一弁護士(左)と大野鉄平弁護士

刑事施設でコロナ感染相次ぐ 「速やかに釈放を」NPO団体が安全確保を求める

刑務所や拘置所などの刑事施設で、新型コロナウイルスの感染者が相次いで確認されている。渋谷警察署の留置場では勾留中の男性7人が感染し、留置場は閉鎖された。

こうした状況を受け、NPO法人「監獄人権センター」は4月28日、刑事施設の収容者と職員の安全確保を求める声明を発表した

法務省や警視庁、警察庁などに対し、(1)勾留取り消しや仮釈放制度を柔軟に活用し収容者などを釈放する、(2)電話など面会禁止に代わる外部交通手段の確保、(3)感染者に対する適切な医療の提供と感染の拡大防止、の3点を求めている。

センター代表の海渡雄一弁護士はオンライン会見で、「刑務所や拘置所には常勤の医師がいるが、警察留置場は医療体制が全く整っていない。医療空白状態の中での感染拡大が危惧される」と訴えた。

●懸念される収容者の感染

収容者の感染リスクは海外でも指摘されており、BBCの報道(4月4日)によると、イギリスでは最大4000人の収容者が釈放される予定だという。

日本でも東日本大震災の際に、被疑者の安全確保ができないとして、福島地検いわき支部が勾留中の被疑者10数人を処分保留で釈放したケースがある。

大野鉄平弁護士は「新型コロナウイルスはさらなる感染拡大が懸念されており、震災などの大震災に匹敵する。刑事施設内の密度を積極的に下げることが大切だ」と話し、すみやかに釈放をすすめるべきと指摘した。

2016年には、現在新型コロナウイルスの影響で一時閉鎖している渋谷署で、職員19人が結核に集団感染したこともある。留置していた男性が肺結核により死亡し、感染者の大半が男の留置に関わっていたことが明らかになっている。

大野弁護士は「以前から指摘されて来た課題が今、浮き彫りになっている。感染が拡大すれば、刑事施設側の管理責任が問われるだけでなく、刑事司法の運用に重大な影響を与える」とし、部屋でのマスク着用などを認めるよう求めた。

●一般面会禁止、代わりの手段を

新型コロナウイルス感染防止のため、法務省は13都道府県にある刑事施設で、弁護士をのぞき原則として収容者との面会を認めない運用を始めている。

海渡弁護士は「一般面会を原則的に禁止するのであれば、電話などによる代替的な手段が確保されるべきだ」と話す。

新型コロナウイルスの感染者が確認された一部の郵便局では、郵便業務が一時的に停止、縮小されているところもあり、「手紙による外部交通も支障が出ている」と指摘する。

法律では、刑事施設の長が必要と認める場合は、電話などによる通信が許される。海渡弁護士は「運用を緩めて、行政の裁量で電話連絡ができるのではないか」と柔軟な対応を求めた。

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