パソコンの遠隔操作事件は被疑者が逮捕されたことで急展開を見せたが、被疑者自身は逮捕後の取調べに対して「まったく身に覚えがありません」と犯行を否認していると伝えられている。このような否認事件については特に、「取調べの可視化」の必要性が大きいとされている。
警察は、裁判員裁判の対象になる一部の事件について、取調べの一部を録音・録画する試みを始めているが、全面的な「取調べの可視化」には至っていない。はたして、刑事事件の取調べは全面的に可視化されるべきなのだろうか、すなわち、すべての事件について取調べの全過程が録画されるべきなのか。
弁護士ドットコムに登録している弁護士に意見を聞いた。
(編集部追記)
このアンケートの実施後、インターネット投票サイト「ゼゼヒヒ」でも同様のアンケートが実施されました。こちらもご覧ください。
http://zzhh.jp/questions/197
今回のアンケートに回答した33人の弁護士のうち25人が、<すべての刑事事件について、「取調べの全過程の録画」を導入すべき>と回答した。いわゆる、「取調べの全面可視化」を支持する意見が約8割を占める結果となった。
ついで多かったのが、<否認事件について、「取調べの全過程の録画」を導入すべき>という意見で、2割弱の6人が支持した。残りは、<現行のように、一部事件について、「取調べの一部の録画」をする方式でよい>という意見が1人、<どちらともいえない>が1人となった。
「取調べの全面可視化」を支持する意見が圧倒的に多かったのは、被疑者・被告人の弁護人になることが多い弁護士の立場を反映しているのかもしれない。その根拠としては、「一部の事件に限ると、どの事件を選ぶかが警察の手に委ねられることになり、恣意的な運用の恐れがある」という主旨の理由をあげる弁護士が多かった。
このパソコン遠隔操作事件は「誤認逮捕」が問題になった事件ということもあって、今後、「取調べの全面可視化」の必要性を訴える声が強まっていくものと考えられる。これをきっかけに、取調べのあり方について、国民的な議論が深まることを期待したい。