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元自転車王者の「飲酒運転事故」で恋人が「身代わり」に・・・2人とも犯罪者になる?
その場のノリで判断しないこと

元自転車王者の「飲酒運転事故」で恋人が「身代わり」に・・・2人とも犯罪者になる?

愛する男性を守るため、恋人が飲酒運転事故の「身代わり」に――。そんなニュースがアメリカから飛び込んできた。ドーピング問題で自転車競技から永久追放された元王者ランス・アームストロング氏が、飲酒運転で交通事故を起こした。その際、同乗していた女性が身代わりになり、罪をかぶっていたことがわかった。

アメリカの新聞「デンバー・ポスト」の報道などによると、アームストロング氏は昨年12月、コロラド州で恋人のアンナ・ハンセンさんと酒を飲んだ後、飲酒運転をして、駐車場に止めてあった2台の車に突っ込んだという。

警察の事情聴取に対して、恋人のハンセンさんは当初「運転していたのは自分だ」と話していた。しかしその後、運転していたのはアームストロング氏だったと、警察に認めた。ハンセンさんは、アームストロング氏が事故を起こしたことが分かれば大騒ぎになると考え、身代わりになるために嘘をついたという。

アームストロング氏は報告義務違反と速度超過の罪により、最大で禁錮90日および罰金300ドル(約3万5000円)の刑に科される可能性があるという。もし日本で、交通事故を起こして、恋人を身代わりにしたことがバレた場合、事故を起こした本人と身代わりになった人は、それぞれどんな罪に問われるのだろうか。平賀睦夫弁護士に聞いた。

●「身代わり」になった人が問われる「犯人隠避罪」とはとは?

「アームストロング氏の事故について報道されている内容からすると、『飲酒したうえ、速度超過のスピードで道路から駐車場に突っ込んで、駐車中の車に衝突し、事故を報告しないで逃走した』という案件のように推測されます」

このような事故を日本で起こした場合、どんな罪に問われるのだろうか。

「日本の法律では、アームストロング氏の行為は、道交法の報告義務違反、最高速度違反、酒気帯び運転等に該当します。いずれも、罰金以上の刑が科される重い犯罪です」

では、アームストロング氏の「身代わり」になるために嘘をついた恋人のハンセンさんも、罪に問われるのだろうか。

「もし、アームストロング氏に頼まれて身代わりになった場合、ハンセンさんは、犯人隠避の罪に問われることになります。刑法では『罰金以上の刑に当たる罪を犯した者または拘禁中に逃走した者を蔵匿し、または隠避させた者は、2年以下の懲役または20万円以下の罰金に処する』と定められています」

身代わりを立てたアームストロング氏については、どうなのだろう。

「刑法では、人をそそのかして犯罪を実行させた人にも、犯人と同じ刑を科しています。結局、アームストロング氏も、ハンセンさんに犯人隠避をするよう仕向けたとして、ハンセンさんと同じ刑を科されることになり、交通事故の責任と犯人隠避の責任を負わなければなりません」

愛する恋人のためを思って身代わりになったのに、自分も恋人も、罪に問われてしまうというのは切ない話だが・・・。

「実は、犯人隠避罪には『犯人の親族による隠避の場合には、犯罪は成立するが、刑を免除することができる』という特例があります。ただ、恋人は親族ではないため、ハンセンさんの刑の免除はありえません。

いずれにしても、安易に犯罪行為に走ったり、他人を巻き込んだりしないよう、慎重な生活を送りたいものですね」

平賀弁護士はこのように述べていた。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

平賀 睦夫
平賀 睦夫(ひらが むつお)弁護士 平賀睦夫法律事務所
東京弁護士会所属。日弁連・人権擁護委員会、同・懲戒委員会各委員、最高裁判所司法研修所・刑事弁護教官等歴任。現在、(公財)日弁連交通事故相談センター評議員、(一財)自賠責保険・共済紛争処理機構監事、日本交通法学会理事等

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