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ストーカー規制法改正「非親告罪は時期尚早、警察のスキル向上を」弁護士が指摘
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ストーカー規制法改正「非親告罪は時期尚早、警察のスキル向上を」弁護士が指摘

今年5月、芸能活動をしていた女子大生が刃物で刺された事件を受け、ストーカー規制法の改正が議論になっている。報道によれば、事件前、女子大生は容疑者からのブログやツイッターへの執拗な書き込みに悩み、「やめさせてほしい」と警察に相談していたが、ストーカー規制法ではSNSは対象外だった。

同法では、執拗な電話やファクス、メールの送信などは「つきまとい行為」と認めているが、ツイッターやLINEなどのSNSは含んでいない。SNSの普及にともなって、過去数年に渡って議論されてきたにもかかわらず、法律は対応できていなかった。

報道によると、公明党が、SNSを規制対象にすることに加え、被害者からの告訴がなくても起訴できる「非親告罪」にすることや、加害者に対して、警察の警告を経ずに都道府県の公安委員会が禁止命令を出せるようにするなど、罰則を強化する改正案をまとめており、与党内で議論を進める。

今後、ストーカー規制法はどのような改正が望まれるのだろうか。犯罪被害者支援に詳しい上谷さくら弁護士に聞いた。

●「加害者は複数のツールを駆使して攻撃する」

「ストーカー規制法の対象にSNSを含めるべきか?という点については、早急に法改正をして、SNSを対象とすることを明記すべきと考えます。

現在のストーカー規制法では、電話、FAX、電子メールに限定されていますが、ストーカー行為が問題になることが多い若者の間では、むしろLINE、Twitter、FacebookなどのSNSがコミュニケーションツールとしては主流だからです。

また、加害者はどれか一つのツールを使うのではなく、LINEや電話、Twitter、Facebook等、ありとあらゆる手段を駆使して被害者を攻撃するケースが多く、被害者の恐怖感は、加害者がどのツールを使っているかによって、異なることはないからです」

●警察官の個人的スキルに差がある

非親告罪にすべきとの声については、どう評価できるのだろうか。

「非親告罪とすべきという点については、現時点では時期尚早と考えます。

DVにも共通することですが、客観的には、ストーカーとして警察が介入すべきと思われる事案でも、特に加害者が交際相手等の場合は、被害者の中に加害者への恋愛感情が残っていることもあります。被害者本人は、仲睦まじい関係に戻れる日が来ると信じているのに、勝手に事件化して引き離されたと被害者が感じ、別のトラブルに発展する可能性もあるからです。

別のトラブルとは、家族や友人の誰かが警察に通報したと疑い、人間関係が壊れる場合や、警察に敵意を抱いて警察との接触を頑なに拒み、本当に介入が必要な場面で警察が躊躇してしまい、重大な結果が生じてしまうような場合です」

最後に、上谷弁護士はストーカー事案の入り口にある問題について、次のように指摘した。

「裁判所や公安委員会の関与も考えられますが、現実的に被害者を守れるのは警察です。しかし、ストーカー事案は、相談を受けた警察官の個人的スキルに差があるのが現状です。

『彼は君をこんなに好きなのに、何が不満なのだ?』『彼も反省しているんだから、許してあげて』等と言って加害者に同情してしまい、ストーカー事件であると認識できない警察官も少なくありません。

重大事件を防ぐためには、法改正と合わせ、警察官全体のスキルを向上させることが急務です」

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

上谷 さくら
上谷 さくら(かみたに さくら)弁護士 桜みらい法律事務所
福岡県出身。青山学院大学法学部卒業後、毎日新聞社に入社。新聞記者として勤務した後、2007年弁護士登録。犯罪被害者支援弁護士フォーラム(VSフォーラム)事務次長。第一東京弁護士会犯罪被害者に関する委員会委員、元青山学院大学法科大学院実務家教員、保護司。著書に「おとめ六法」(共著、KADOKAWA)、「死刑賛成弁護士」(共著、文春新書など)

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