ネット上で「ヤマトリノ」の名前で活動するインフルエンサーの女性が、麻薬取締法違反(所持)の疑いで、交際相手の会社役員の男性とともに現行犯逮捕されたと報じられました。
報道によると、逮捕は9月15日。自宅マンションの一室でコカイン約0.4グラムを所持した疑いが持たれています。調べに対し、女性は「(交際相手と)一緒に使っていた」と供述している一方、男性は否認しているといいます。
部屋からは白色の粉末が入った21袋や、ストローも押収されており、粉末は現在鑑定中とみられます。詳細はまだわかりませんが、もし容疑が事実であれば、女性が実刑となる可能性はあるのでしょうか。
●ポイント1:所持していた「量」
刑事事件では、大きく「不起訴」になるか、起訴された場合には「執行猶予がつく」か「実刑」か、という3つの可能性があります。
この3つを分けるうえで、まず所持していた量が問題となります。
実務上、所持していたコカインが、ごく微量である場合には、不起訴(起訴猶予)もあり得ます。
しかし、コカインの1回あたりの使用量は、一般に0.03グラム程度とされています。今回押収された0.4グラムであれば、単純計算で10回以上使用できる量にあたります。
私見ですが、この量は決して多い量とはいえないが、ごく微量とまではいえず、不起訴で済むとは考えにくいと思います。
現時点で判明しているのが押収された0.4グラムのみだとすれば、自己使用目的の単純な所持と評価される可能性が高く、初犯であれば、執行猶予が付く可能性が最も高いと考えられます。
なお、報道によると、この0.4グラムのほか、「白色の粉末21袋」が押収されているといいます。この粉末の鑑定結果にはよりますが、少なくとも不起訴の可能性は低いと考えられます。
●ポイント2:「営利目的」の有無
次に、「営利目的」があったかどうかがポイントになります。
麻薬取締法上、自己使用目的の単純な所持であれば法定刑は「7年以下の拘禁刑」ですが、販売など営利目的の所持と認定されると、法定刑は「1年以上10年以下の拘禁刑」に引き上げられます(麻薬及び向精神薬取締法第66条)。
刑の下限が「1年以上」に設定されるため、営利目的所持と認定された場合は、前科のない初犯であっても実刑判決になりやすい傾向があります。
「営利目的」は主観的な要件ですが、本人が「営利目的ではありません」と言えば、常に営利目的がない、という認定がされるわけではありません。
また、大量に所持していたからといって、直ちに営利目的と判断されるわけでもありません。小分けにされた袋の状態や、顧客とのやり取りをうかがわせるメモの有無、金銭のやり取りの実態などが総合的に考慮されます。
今回押収された21袋の中身が薬物かどうか、その量がどの程度かは、報道の時点では鑑定中とされています。
この21袋の内容次第で、営利目的の有無をめぐる評価や、実刑の可能性が変わるかもしれません。
●交際相手の男性は「共同所持」となるのか
報道によれば、女性が容疑を認める一方、同居する交際相手の男性は「自分のものではない」と否認しているそうです。
複数人が同じ薬物を共同で管理・使用していたと認められる場合、「共同所持」として、双方が所持の責任を問われることがあります。
他方で、実際には同居する一方だけが使用しており、もう一方は薬物の存在を知らず、自由に扱える状態ではなかったと認定される場合には処罰されません。
本件では、現時点では女性のみが使用を認めており、男性側は共同所持を否定しています。
男性との関わりを直接裏付ける事情は明らかになっておらず、検察官が立証する責任を負います。
薬物の入手にあたって誰が金銭を出したか、保管されていた場所が一方だけが使う場所だったか2人が共同で使う場所だったか、尿検査の結果や生活実態など、さまざまな事情から共同所持といえるかどうかが判断されることになります。
今後の捜査で、金銭の流れや尿検査の結果などから男性の関与を示す事実が出てこなければ、男性については所持の責任を問われない可能性もあります。
私見ですが、女性が初犯であれば、現時点で判明している0.4グラムの所持のみを前提とすれば、自己使用目的の所持として執行猶予が付く可能性が高いと考えます。
ただし、押収された21袋の中身や、営利目的の有無をめぐる今後の捜査結果次第では、実刑となる可能性も否定できません。
小倉匡洋(弁護士ドットコムニュース編集部記者・弁護士)
(参考文献)「情状弁護Advance」(現代人文社、2019年10月)