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テレビは「没収」されるの?クレカは作れないの? 「自己破産」の疑問点、解消します
画像はイメージです(nonpii / PIXTA)

テレビは「没収」されるの?クレカは作れないの? 「自己破産」の疑問点、解消します

自己破産したらどうなるのか——。「自己破産」という言葉はよく聞きますが、実際に検討をはじめた当事者としては、「パソコンは所有できるの?」「クレジットカードは作れないの?」など、さまざまな疑問が出てくるようです。

自己破産とはどんな制度で、生活にどんな影響が出てくるのでしょうか。和賀弘恵弁護士に聞きました。

●「ギャンブルが理由でも自己破産はできますか?」

——ギャンブルで借金を作ってしまったという話はしばしば耳にします。ギャンブルが理由だと、自己破産はできないのですか。

自己破産するためには、「支払不能状態」におちいっている必要があります。

「支払不能状態」とは、収入と借金との兼ね合いですので、一概に「●●円借金があれば自己破産できる」というようなことではありません。ただ、通常の暮らしをして、3年程度で返済できるような額であれば、「支払不能状態」とまではいえない可能性があります。

自己破産して経済的にやり直そうとする場合、債務を免責してもらうことが重要となります。免責とは、債務の支払いを免除してもらえることです。自己破産ができたら、通常は免責も認められます。

もっとも、一定の条件に該当する場合には、免責が認められないこともあり得ます。いくつか条件がありますが、ギャンブルや浪費で多額の借金ができてしまった場合、一般的には免責が認められません。

ただ、これは絶対ではなく、裁判官の裁量により、ギャンブルや浪費の理由に酌量の余地があったり、自己破産しようという人の生活再建のために必要と認められれば、免責または一部免責されることもあり得ます。

●「財産はすべて没収されますか?」

——自己破産すると、財産は全てとられてしまうのでしょうか。

財産を全部没収されてしまうと、自己破産を申し立てた人は生活再建ができません。

そのため、新しい人生をスタートするための、必要最小限度の財産である「自由財産」を残すことが法律上許されています。自由財産とは、(1)生活に必要な家財道具、(2)20万円以下の財産です。

たとえば、家具、電化製品などは(1)に該当し、家中のものをすべて処分されるということはありません。一方、高額なテレビやゲーム機などについては、生活必需品とまでは言えないでしょうが、実際の運用において、処分して債権者に配当することにはならないでしょう。

ただし、これは、個人の自己破産で通常利用されることが多い、「同時廃止」という手続きを利用した場合を前提としています。

「同時廃止」を利用した場合、免責不許可事由の調査が十分になされません。そのため、事実上、裁量免責が認められないおそれがあります。

●「ローンやクレジットカードを作れますか?」

——自己破産後も生活は続きますが、これまでと同じようにローンを組んだり、クレジットカードを作ったりすることはできるのでしょうか。

自己破産すると、一定の職業に就けないこと、一定の資格が取れないことなどの制限はありますが、日常生活には何ら影響がありませんし、周囲の人に知られることもありません。

ただし、信用情報機関というところが、個人の金融関係の記録を保持しており、そこに、自己破産したことが情報として登録されます。

——いわゆる「ブラックリスト」と呼ばれるものでしょうか。

そうです。金融機関は、その個人の信用情報を共有していますので、新しくローンカードを作ること、住宅ローンを組むことなどは、事実上一定期間制限されます。一般的には、その期間は5年から10年と言われています。

現在住んでいる賃貸物件から出ていけなどといわれることはあり得ません。ただ、新規に賃貸物件を借りる場合、家賃滞納に備えて家賃保証会社を利用することが条件とされていることがあります。その場合、家賃保証会社の審査に通らないということは起こり得ます。

●「親族に迷惑がかかったりしませんか?」

——自己破産の際、親や親族が借金を肩代わりさせられることはないのでしょうか。

自己破産をした場合に、親、兄弟が債務を引き受けなければいけないということはありません。

ただ、保証人がいる場合、自己破産をした本人は債務を支払う必要がありませんが、代わりに、保証人が保証した債務は、保証人がすべて責任を持って支払うということになります。

自己破産をする場合には、保証人がついていないかどうかをよく確認し、もし保証人がいるのであれば、その方と話をつけてから自己破産手続に入ったほうが良いでしょう。

(弁護士ドットコムライフ)

プロフィール

和賀 弘恵
和賀 弘恵(わが ひろえ)弁護士 みつ葉法律事務所
大手食品メーカー、行政職員の経験を経て、目の前のただ1人の人を救う仕事をしたいと思い、弁護士を目指しました。現在は、的確な法的解決のご提案に加えて、カウンセリング機能も果たせる弁護士を目指して奮闘中です。

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