タレントの辺見えみりさんの母で、歌手の辺見マリさんが、9月中旬に放送されたテレビ朝日系のバラエティー番組「しくじり先生」に出演し、洗脳されて5億円つぎ込んだという過去を明かした。辺見さんの告白はネットで大きく話題になった。
辺見さんは、1988年に男性マネージャーに誘われて「拝み屋」と称する人物と出会い、洗脳された結果、5億円もの大金をつぎ込んでしまったという。番組では、洗脳されるまでのプロセスとそこから抜け出した過程を丁寧に語り、洗脳の恐ろしさを説いた。洗脳は13年にわたり、つぎ込んだお金は1円も戻ってきていないそうだ。
辺見さんに限らず、新興宗教などのカルトにはまり、お金をつぎ込んでしまう人は後を絶たない。つぎ込んだお金を返してもらうことはできるのだろうか。それとも、洗脳されたとはいえ、自分の意思で払ったお金は返してもらえないのか。カルト被害の問題に取り組む藤森克美弁護士に聞いた。
●損害賠償が認められるケースとは?
「相当額のお金を返してもらうことは可能と考えます」
藤森弁護士はこのように述べる。具体的には、どんな場合にお金を返してもらえるのだろうか。
「参考になる判例を紹介しましょう。福岡地裁の1994年5月27日の判決です。
これは、ある宗教団体の霊感商法に対する損害賠償請求訴訟でした。信者らが2人の未亡人に対し、亡くなった夫に関して、先祖の因縁話で不安をあおり、執拗に迫って高額の献金をさせたり、弥勒像等を購入させた事案です。
福岡地裁は、献金を勧誘する行為は、布教活動の一環として行われたものであったとしても、その『目的』『方法』『結果』において到底社会的に相当な行為であるということはできず、違法であると認定し、原告の賠償請求を認めました。
同判決の結論は、高裁でも最高裁でも維持され、同種事案の先例判決となりました」
●辺見さんは返金を求めることはできるのか?
辺見さんも、返金を求めることはできるのだろうか。
「目的、結果、方法という観点で考えてみましょう。詳細な事実関係を確認する必要がありますが、5億円もの大金を支払ったことが不当であること(結果)。また、『拝み屋』による『洗脳』という不当な手段であったことが推察できます(手段・方法)。
あとは主として『目的』の違法性を解明することがポイントということになるでしょう。
『拝み屋』の現在の資力にもよりますが、交渉によってもそれなりの被害回復は見込める事案と考えられます。裁判になっても勝訴見込み、和解解決の見通しは十分ありますので、諦めることはありません。
まずは弁護士を立てて交渉することをお勧めします」
藤森弁護士はこのように述べていた。