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原付「酒気帯び運転」で自損事故を起こした大学生 「就職活動」で不利になるのか?
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原付「酒気帯び運転」で自損事故を起こした大学生 「就職活動」で不利になるのか?

飲酒運転で自損事故を起こしてしまった大学3年の学生から、就職活動をする際に「色々な面で不利になったりするでしょうか。また、履歴書などには書く必要はあるでしょうか?」との質問が、弁護士ドットコムの法律相談コーナーによせられた。

その学生は、飲み会後に原付バイクに乗って帰宅中、自損事故を起こしたとき、アルコール濃度が0.3%以上、検知されたそうだ。大学院に進学後、大手企業への就職を希望しており、就職活動への影響を心配している。

この学生の就職活動には、なんらかの影響があるのだろうか。また、飲酒運転で自損事故を起こした場合でも、履歴書の「賞罰欄」に書く必要はあるのだろうか。種村求弁護士に聞いた。

●どのような「罰」を申告すべきか?

「結論から申し上げれば、この学生について、就職活動への影響はないと思われます。

履歴書の賞罰欄において、いかなる『罰』を記載するべきか、根拠となる法律はありません。そして、いかなる『罰』を記載しなければならないか、社会通念上、定まったものがあるわけでもありません。

そのため、学生が就職活動する際に、賞罰欄への記載も含め、過去の犯罪歴等について申告する義務があるとはいえないように思います。仮に、過去の犯罪歴等が就職後、会社に発覚したからといって、申告しなかったことを理由に懲戒処分を行うことが正当化されるとも考えにくいところです」

当の大学生はホッと胸をなで下ろしそうな回答だが、種村弁護士は「しかしながら」と次のように続けた。

「公務員採用試験など、応募する際に、賞罰欄の『罰』として『1年以上の懲役又は禁固の刑に処せられたこと』または『刑の執行を終わり、又は刑の執行を受けることがなくなった日から2年を経過していないこと』を記載することが要求されている職種があります。

したがって、民間企業に就職する際にも、このレベルの事項については、申告する義務があるという見解が成り立つ余地もありそうです」

では、その見解をもとに就職先が「懲戒処分」を行うことも考えられるのだろうか。

「酒気帯び運転の場合の法定刑は『3年以下の懲役又は50万円以下の罰金(道路交通法第117条の2の2第2号)』です。しかし現実には、初犯であれば、罰金刑に処せられるだけでしょう。

仮に上記見解によったとしても、酒気帯び運転で罰金刑に処せられたことを申告する(賞罰欄への記載を含む)必要はないでしょう。また、就職後に罰金刑に処せられた事実が発覚したとしても、就職活動時に申告しなかったことを理由に懲戒処分を行うことが正当化されることもないでしょう。

そのため、就職活動時に、過去に酒気帯び運転により罰金刑に処せられたことを申告する必要はないこととなり、就職活動への影響はないと思われます」


種村弁護士はこのように述べていた。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

種村 求
種村 求(たねむら もとむ)弁護士 川崎パシフィック法律事務所
債務整理、交通事故、相続・遺言、借地・借家、離婚、高齢者問題、労働問題、企業法務、民事介入暴力対策、刑事事件など、個人や中小企業に生じるありとあらゆる問題を扱っております。

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