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秋田書店の「読者プレゼント水増し」告発後に解雇された女性、会社と「和解」成立
原告の女性が記者会見を行った

秋田書店の「読者プレゼント水増し」告発後に解雇された女性、会社と「和解」成立

東京の出版社「秋田書店」による読者プレゼントの当選者数「水増し」を告発した30代女性が告発後に解雇され、同社に対して解雇の取り消しと損害賠償などを求めていた訴訟で、10月28日、和解が成立した。

東京地裁で成立した和解の内容は、女性が2012年3月20日付けで合意退職したことを相互に確認する一方、秋田書店が女性に解決金を支払うというものだ。また、秋田書店が懲戒解雇を通告した理由について、女性が同社の水増し行為を消費者庁に通報したためではなかったとしている。秋田書店の代理人弁護士によると、解決金は120万円だった。

●解雇の取り消しと損害賠償を求めて提訴 

女性の代理人の笹山尚人弁護士によると、女性は2007年、同社に正社員として入社し、女性向け漫画雑誌の編集部で読者プレゼントの発送などを担当していた。入社当初から上司の指示で、読者プレゼントの当選者数を実際より多く表示するという水増し行為に加担させられていた。水増し行為について、女性が編集長に異議を唱えると、「上から言われたことをきいて、文句を言わずに黙って仕事をしろ」などと言われ、不正を続けることを強要されたという。

さらに、パワハラや長時間過密労働も重なり心身に不調をきたした女性は、2011年9月から休職することになった。しかし休職中の2012年3月、「読者プレゼントを発送せずに盗んだ」などとして、秋田書店から懲戒解雇された。

女性は「解雇は不当だ」として、2013年9月、解雇の取り消しと損害賠償などを求めて、秋田書店を提訴した。その直前の2013年8月には、秋田書店の当選者水増し行為について、消費者庁から再発防止を求める措置命令が出されていた。そして、提訴から2年あまりが経ったこの日、同社と女性の間で和解が成立した。

●解雇撤回は明確に記載されず 

女性は懲戒解雇の取り消しを求めていたが、その点は和解条項に明確に記載されず、「合意退職」という形に落ち着いた。

その点について、笹山弁護士は和解成立後の記者会見で「会社は、懲戒解雇を最後まで撤回しなかった。形式的に懲戒解雇は撤回されていないが、合意退職として上書きしたという形で、事実上撤回したと理解すべき」と話した。同席した女性も「事実に基づかない懲戒解雇が上書きされ、再就職に困らなくなったのは良かったと思う。私の名誉と労働者としての尊厳を保てて安心している」と語った。

女性は、次のように秋田書店に対する批判を口にしていた。

「秋田書店の腐敗した性質は、何一つ変わっていない。景品の水増しという違法行為で、処罰された人はひとりもいません。私にパワハラをしていた編集長は別の部署に異動したものの、今も編集長のままです。パワハラも、読者をだます不正行為も、また形を変えて起きるのではないかと思えてなりません」

一方、秋田書店は声明を発表。裁判所から、「元社員の将来のことを考えて、解雇以外の表現上の配慮が必要ではないか」との示唆を受けて、解雇という言葉に言及せず、少なくとも解雇通知が届いた日には雇用関係が終了することを相互に確認する案になったという。「解雇撤回はしておりません。このことを明確に申上げておきます」としている。

(弁護士ドットコムニュース)

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