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建設アスベスト訴訟「一人親方など個人事業主も救済」の画期的判決 東京高裁
判決後の光景

建設アスベスト訴訟「一人親方など個人事業主も救済」の画期的判決 東京高裁

「一人親方全員救済」。裁判所前に判決要旨が伝えられると、周囲から一際大きな歓声が上がった。3月14日、東京高裁(大段亨裁判長)でくだされた首都圏建設アスベスト訴訟の第二審判決は、国の責任を認め、原告354人中327人に対し、総額22億8000万円余りの賠償を命じた。

最大の特徴は「労働者性」に関係なく、一人親方などの個人事業主も救済対象としたことだ。弁護団によると、アスベスト訴訟では初の判断。一審の170人、賠償額約10億6000万円からほぼ倍増となった。裁判所前では、原告や支援者らが抱き合い、喜びを分かち合っていた。

判決後の記者会見で、一審では請求を棄却された元一人親方の宮島和男さん(88)と鈴木勇さん(76)は、それぞれ「10年間長かったな」「ホッとしました」と語った。

●(1)労働者性に関係なく事業者を救済、(2)国の責任期間の拡大

勝訴の旗出し

この裁判は、首都圏の元建設労働者と遺族ら計354人がアスベストを吸い、肺がんや中皮腫などになったとして、国と建材メーカー42社に総額約120億円の損害賠償を求めたもの。今回の控訴審判決では、一審判決と同様に、国が規制権限を行使しなかったのは違法だとして、損害賠償を認めた。

一審判決との大きな違いは2つ。1つ目は前述した通り、一審で労働者性が認められなかった150人(被災者ベース)ほどいる一人親方らを救済対象としたこと。2つ目は、国の責任期間を拡大したことだ。

従来、一人親方などの事業者は、国との関係においては労働者性が認められないと救済の対象にならなかった。一方、今回の判決は、労働安全衛生法の趣旨などに照らし、労働者性にかかわらず、救済の対象に含めた。有害物の規制や職場環境の保全については、労働者以外も保護対象になるとの判断だ。

また、一審では1981年からとした国の責任期間を6年早め、1975年10月1日(改正特定化学物質障害予防規則施行日)に。明確に示されなかった終期を2004年9月30日(改正労働安全衛生法施行令施行日前日)とし、救済の対象を広げた。

●国の上告をけん制、全員救済に向け「国と業者らによる基金」を求める

ただし、メーカーの責任は認められなかった。

同種の建設アスベスト訴訟は、全国6地裁で7件あり、高裁判断は今回が2回目。最初の控訴審となった、2017年10月の東京高裁判決では一部メーカーの責任が認められていただけに、原告からは「悔しい」など不満の声も漏れた。また、屋外作業に関わっていた原告も救済の対象にならなかった。

記者会見の様子

原告団が求めるのは、全員救済と早期解決だ。弁護団長の小野寺利孝弁護士は、建設アスベスト訴訟で国の責任が認められたのは今回で8回目だとして、「国は謝罪を拒否し、最高裁に判断を託す形で解決を先送りするのはやめてほしい」とコメント。「国とゼネコン含む建設事業者がしっかりと社会的責任を果たすことになるよう、政治主導による解決を求めていきたい」と述べた。具体的には、国と建設業者らの共同出資による救済基金の設置などを求めていくという。

(弁護士ドットコムニュース)

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