女性の人権問題と刑事事件に注力。より良い社会の実現に向けて目の前の事件に真摯に取り組む
検察官志望から弁護士志望に変えた理由
ーー弁護士を目指したきっかけを教えてください。
中学生の頃にドラマ『HERO』を観たことがきっかけです。主人公の検察官が事件に向き合う姿勢や問題を解決していく様子がかっこよく見え、検察官になりたいと思うようになりました。そのため、司法修習の途中までは弁護士になるつもりはまったくなく、検察官を目指していました。
しかし、司法修習を通じて検察官の仕事を直に見ると、ドラマと現実との違いを感じるようになりました。検察官や裁判官の仕事は資料を読み込むことが中心で、現場に直接足を運ぶ機会は多くありません。
一方で、弁護士は依頼者のところに行き、直接話を聞くことができるという点に醍醐味を感じました。依頼者と直接関わり、その声を聞きながら問題を解決していくことに魅力を感じ、弁護士の道へ進むことを決めました。
ーーどのような弁護士になろうと思われたのですか。
私の中で一貫しているのは、より良い社会、社会正義を求めることです。特に、障害を持っている方や女性の人権を守りたいという強い思いがあります。検察官を目指していた頃から、弱い立場の人を助けたいという思いがあり、それは今でも変わっていません。
私の活動の基盤には、みんなが幸せになれる社会を作りたいという思いがあります。この思いが、現在の弁護士としての活動に繋がっています。この理想を実現するべく、これからも努力を続けていきたいと思います。
ーー部活やサークルなど、学生時代取り組んでいたことありますか。
学生時代はアルバイトに励んでいました。学費を稼ぐ必要があったのはもちろんですが、様々な仕事を経験することに楽しさを感じていました。
スーパーのレジ打ちや土木系の仕事、映像や音楽のPA、運送会社、スポーツジムの風呂清掃など、様々な環境で働きました。
弁護士の中にはこうした経験をしていない方も多いと思いますが、様々な環境で働いたことは、私が弁護士として活動する上で大いに役立っていると感じています。労働問題において労働者側の気持ちがわかるというだけではなく、広い視野や臨機応変な対応力も身についたと思います。
法律相談は依頼者に安心感を与えることが大切
ーー注力している分野を教えてください。
女性の人権問題と刑事事件に注力しています。
私の父は「男は外で仕事をして、女は家を守る」という昔ながらの考えを持っていました。子どもの頃はそのことに疑問を持つことはなかったのですが、物心がついた頃から、「男性はこうあるべき」という父の教えに疑問を持つようになりました。
その後、大学や大学院でフェミニズムの授業を受けたことで、女性の権利や社会的なジェンダー問題に深い関心を持つようになりました。
授業を受けている生徒の9割が女性でしたが、私はむしろ、男性が考えなければならない問題ではないかと思いました。そして、男性の立場から女性の人権問題を扱いたいと考えるようになり、現在の活動に繋がっています。
ーー刑事事件に注力しているのはなぜですか。
元々検察官志望だったこともあり、弁護士になる前から刑事事件に興味がありました。また、多くの刑事事件を担当し、経験を培ってきたことから現在も注力しています。
刑事事件は女性の人権問題と絡むケースも多いです。近年、乳児の死体遺棄事件が全国的に発生していますが、2022年に神奈川県で発生した4件のうち、2件を私が担当しました。
こうした事件は、女性特有の問題や悩み、不安が色濃く反映されています。刑事事件の弁護活動を通じて女性の人権を守ることができると感じており、全力で取り組んでいます。
ーー仕事をする上で心がけていることを教えてください。
人の話をきちんと聴くことです。弁護士になる前からその重要性を理解していましたが、弁護士になってからは、日々の業務に追われ、時間を確保することの難しさを実感しています。
相談者の話の途中で答えが見えたり、話の筋が読めたりすることもありますが、話を遮らずに最後まで聞くことが大切です。また、重要ではないと思われることの中に、大事な事実が含まれていることもあります。どんな話も最後まで聞き逃さずに聞くことが必要です。
法律相談は、回答を示すだけでなく、相談者に安心感を与えることが大切だと考えています。そのためには、話を丁寧に聞きながら、理解し納得してもらうことが肝心です。
私が検察官ではなく弁護士を選んだ理由は、依頼者と直接関わることに醍醐味を感じたからです。その原点を忘れずに、常に相手の立場に立ち、真摯に向き合うことを心がけています。
ーーこれまでの活動で印象に残っているエピソードを教えてください。
刑事事件で特に印象に深いのは、窃盗症の方の事件です。窃盗症は、様々な症例がありますが、比較的に主婦の方によく見られ、たとえば、お金に不自由がないにもかかわらず、何度も少額の窃盗を繰り返すというような症状が見られます。
私が担当した事件の中に、50代の女性が1、2年の間に5、6件の窃盗を繰り返したケースがありました。最初の窃盗は起訴猶予になりましたが、繰り返すうちに罰金刑、執行猶予と刑が重くなり、ついには、執行猶予中の再犯で、このままでは実刑判決も避けられないという状況にまで至りました。
窃盗症に限らず、病気が事件の要因となるケースは多くあります。しかし、警察や検察が被疑者・被告人の病状を調査することは少なく、病気を主張しても「減刑を図るための口実」と見なすことが多いです。
また、罪を犯した本人も、自分が病気であることを理解していないことが多いのです。だからこそ、弁護士がしっかりとサポートすることが必要だと強く感じています。
窃盗症のように何度も罪を繰り返してしまう場合、医療機関での適切な治療が必要です。私は弁護士として、治療に適した病院を探し、依頼者に通院を勧めています。これが、次の犯罪を防ぎ、依頼者のためになると考えています。
窃盗症をはじめ、病気が関連する事件を解決するには医学の知識が必要です。裁判での主張や、医師との情報共有、本人への説明などを行う際、医学の知識を活かせれば、より適切な解決を図ることが可能になります。法律に加えて、医学についても、知識を深める努力を続けています。
先ほど話した50代の女性は、病院へ通うようになってから一度も窃盗を行っていないようです。窃盗症のような精神的な病はすぐに治るものではありませんが、このまま平穏な暮らしを続けてもらいたいと願っています。
より良い社会を作りたい
ーー趣味や休日の過ごし方を教えてください。
車やバイクが大好きで、運転するだけでなく整備も好きです。休日は愛車の整備をしたり、ドライブに出かけたりしています。
もう一つの趣味はものづくりです。日曜大工やDIYも好きですが、最近はYouTubeで大工さんや職人さんが作業する動画を観て楽しんでいます。左官の仕事や車の外装作業を見て、その美しい仕上がりに感動しています。将来的には、自分でもそういった作業に挑戦してみたいです。
車の整備やものづくりに関する知識は、仕事にも役立つと感じています。交通事故や建物の瑕疵に関する事件など、車や家屋が絡む法律問題は少なくありません。広く知識を持つことは、弁護士の実務にも活きるため、趣味と実益を兼ねて知識を深めています。
ーー今後の展望を教えてください。
女性の人権課題については、夫婦別姓の問題など、まだまだ進展が見られない部分が多くあります。格差や不平等に対して、弁護士としてしっかり立ち向かっていかなければならないと感じています。
個別の事件への対応はもちろん、社会運動を通じて女性の人権問題を解決するために動いていきたいと思っています。
特に力を入れたいのは、全国的な乳児死体遺棄事件の解決に向けた運動です。赤ちゃんポストの取り組みをしている熊本県慈恵病院の先生とも一緒に活動しています。
死体遺棄事件は多くの場合、国選弁護人が対応するため、遠方の場合は対応が困難なこともあります。そのため、どのように運動を広げるかが課題ですが、一歩一歩進めていくつもりです。
ーー弁護士のやりがいをどのような点に感じていますか。
自分の仕事によって依頼者の不安を軽減し、幸せな気持ちで過ごしてもらうことにやりがいを感じています。少しずつでもそのようなことが増えていけば、最終的にはより良い社会につながるはずです。
私の根底には「より良い社会を作りたい」という思いがあります。しかし、抽象的な理想だけでは現実的な問題は解決できません。だからこそ、個別の事件に取り組み、1件1件をより良い方向に解決することが重要です。悩んでいる人々を少しでも減らすことができれば、それが私のやりがいにつながります。
ーー最後に、法律トラブルを抱えている方へメッセージをお願いします。
悩まれている方にぜひお伝えしたいのは、「迷ったら相談に来てください」ということです。
「これって弁護士に相談するような内容なのかな」と考え、相談すること自体にハードルを感じている方も多いかもしれません。また、弁護士、司法書士、行政書士の違いがわからず、誰に相談すべきか迷っているうちに時間だけが経過してしまうこともあります。これでは悩みが解決しないまま、モヤモヤが募るだけです。
トラブルによっては、時間が経つほど解決が難しくなることもありますので、迷ったらすぐに相談に来ていただくことが大切です。ぜひご相談ください。