弁護士として約35年、一貫して労働者保護に注力。誰も泣き寝入りしない社会を目指して闘います
「労働者の権利を守りたい」という想いを胸に、キャリアを重ねてきました
――これまでのご経歴について教えてください。
大阪で生まれ、小学校まで東京で過ごしました。そして高校卒業まで神奈川で過ごし、北海道大学法学部に進学しました。1990年に弁護士になり、ずっと川崎合同法律事務所に所属しています。
――どういったきっかけで弁護士を目指されたのでしょうか?
高校生のとき、ベトナム反戦のデモに行った友人が逮捕されたことがあったんです。そのとき弁護士が助けてくれたそうで、友人は弁護士という存在の重要性を熱心に語ってくれました。そして、「藤田なら良い弁護士になるだろうから是非目指してほしい」と言われたんです。それが、弁護士という仕事を意識したきっかけでした。
その後法学部に進み、勉強に遊びに、興味を持った活動に取り組む中で、様々な人と出会いました。その中で、私が法学部ということもあって、交通事故や差別問題などの相談を受けるようになったんです。私なりにできることをした結果、すごく喜んでもらえて、法律を使って直接人を助ける仕事をしたいという思いが強くなりました。それで、4年生になった頃から本格的に司法試験の勉強を始めました。
――どんな弁護士になりたいと思い描いていましたか?
当時は、日本が大きく変わっていく時代でした。その中で、労働者の権利を主張して使用者と闘う労働組合が差別されるようになったんです。正当な権利を主張しているのに差別されるなんておかしいですから、私は労働者の味方として闘う弁護士になりたいと思いました。
――長年弁護士を続けてこられましたが、振り返ってみていかがでしょうか?
「労働者を守りたい」という当初の想いはずっと持ち続けています。多くの労働者から依頼を受け、ともに闘う中で、その想いは一層強くなりました。
弁護士というのは、依頼者の悩みを自分事として実感できたときに一番強さを発揮できると思っています。
話を聴き、現場に行き、依頼者の家族とも付き合い、一緒の時間を過ごす。その過程で、依頼者が、学生時代に描いていた「抽象的な労働者」ではなく、顔も名前も気持ちもわかる「一人一人個性を持った労働者」になっていきます。依頼者の悩みがどんどん自分ごととして感じられるようになり、「どうにかして、この苦境から依頼者を救いたい」と力が湧いてくるんです。
労働者の権利保護こそ、多くの人の幸せを実現する方法です
――改めて、先生が長年にわたって労働者保護に力を入れてこられた理由をお聞かせください。
憲法で保障されている生存権は、まず労働によって実現されるものです。だからこそ憲法は、労働者を手厚く保護しています。
ただ、どうしても働けない人は、福祉によって支えられて生存権を実現するという二段構えになっています。ということは、労働者の権利を守っていくことが生存権の実現になるんです。そして社会の圧倒的多数が労働者ですから、社会のかなり多くの人の生存権を実現できるということになりますね。これが、私が労働者保護に力を入れている大きな理由です。
――先生としては、どういった社会を目指して仕事をされていますか?
きちんとした労使自治が実現できる社会です。これまで弁護士をはじめたくさんの人たちが闘ってきた成果として、法律が変わり、画期的な判決がたくさん出てきました。そして私自身も、その一翼を担ってきた自負はあります。ただ、まだまだ労働者の権利が十分守られているとは言えません。
――非正規雇用の問題にも力を入れてこられたのでしょうか?
はい、もちろんです。派遣切りなどの問題は、非正規雇用を選んだ人の自己責任という意見もあります。しかし様々な事情で正社員になれない人もいますから、自己責任では片付けられません。
出世競争や残業を避けたいといった理由で非正規雇用を選ぶ人もいますが、それはそもそもサービス残業などを強いられる正社員の労働環境が歪んでいるんです。ですから、非正規雇用を選ばざるをえない社会そのものを正す必要があると思います。
長年のキャリアにより、先を読む力が磨かれました
――仕事をする上で、どういったことを大切にしていますか?
たくさんありますが、とにかく依頼者の話をよく聴くことは非常に大切にしています。こちらが途中で遮ったり急かしたりすると話しにくいと思いますので、まずはじっくり聴き、その方の状況や想いを受け止めます。
依頼者の本当の希望を発見することも大切にしています。たとえば、今はネットで調べれば、法律に関する情報を簡単に手に入れることができます。弁護士に相談する前に色々と調べてから事務所に来る方も多いですが、誤った情報を信じてしまったり、都合良く解釈してしまったりしている方も少なくありません。
ですから、依頼者が「こうしたい」と言っていることが、本当にその方が望んでいることとは限らないのです。また、自分が本当はどうしたいのかわからない方や、うまく言葉にできない方も多いです。
表面的な言葉にとらわれず、目の前の依頼者が本当に望んでいることは何かを探るために、表情や仕草などにも注目しながら傾聴するようにしています。
――長年弁護士をされていますが、それによって得られた強みはどういったところでしょうか?
先が読めることです。全く同じ案件はありませんが、共通する部分はあります。長年弁護士を続けてたくさんの案件を解決すると、「こういう状況であれば、おそらくこうなるだろう」「こういう主張をすれば、相手はこう反論してくるだろう」といったことを推測できるようになるんです。
後輩の弁護士には、よく、「絵を描けるようになりなさい」と言っています。絵を描くというのは、依頼された案件をよく検討して先を読み、「こういうふうに解決していこう」という全体像を描いた上で対応することです。相手の主張や起こったことに場当たり的に対処していくようでは、依頼者の要求を通していくことはできません。
私は約35年間弁護士を続けてきましたが、10年、20年、30年とキャリアを積めば積むほど知識も経験も増え、先を読む精度が上がっていきます。「絵を描く」ということには自信があります。
――たしかにそれは、長く続けてこそ到達できる域ですよね。
もちろん、若い弁護士には若い弁護士の良いところがあります。大事なのは、どうすれば自分の強みを活かせるかということです。当事務所には15名以上の弁護士が所属していて、若手も中堅もベテランもいます。ケースによってはチームを組んで対応する場合があり、そんなときは若い弁護士の視点にハッとさせられることもあります。
先ほど、先が読めるという話をしましたが、それが悪い方向に働くと、決めつけや思い込みにつながる可能性があります。また、弁護士が一方的に突っ走っても、依頼者の気持ちが付いてきません。どんなにキャリアを重ねようとも、依頼者の話をよく聴き、その方の意向を尊重して進めていくという基本を忘れてはならないと肝に銘じています。
誰も泣き寝入りせずに済むよう全力を尽くします
――プライベートについても伺います。休日の過ごし方やご趣味はいかがでしょうか?
サッカーが好きで、昔は弁護士同士でチームを作ってプレーしていました。今はさすがに体が追いつきませんが、川崎フロンターレファンで観戦にも行っています。2018年のロシアワールドカップは、現地まで観戦に行きましたよ。
あとは普段忙しい分、休日は孫と遊んだり、海岸沿いを散歩したりしてリフレッシュしています。
――今後の展望についてお聞かせください。
あと10年くらい経ったら、ある程度後輩弁護士に案件を任せていこうと思っています。これを事務所で言うと、「10年経たないと任せないんですか」と笑われるのですが。
私が理想的だと考えているのは、誰も泣き寝入りせずに済む社会です。そんな社会を作るために、私にできることはまだまだやっていきたいと思います。