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元ユーザーの個人情報さらして炎上した「ゴルスタ」終了、法的にどんな問題があった?
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元ユーザーの個人情報さらして炎上した「ゴルスタ」終了、法的にどんな問題があった?

元ユーザーの個人情報をツイッターに書き込むなどして、ネットで炎上した中高生限定スマートフォン向けアプリ「ゴルスタ」をめぐって、運営会社のスプリックスは9月上旬、同アプリのサービス終了を発表した。

ゴルスタは2014年10月、「全国の中高生と友達になれる」をキャッチフレーズにサービスを開始。運営担当者が今年8月、ゴルスタの運営方針を批判していていた元ユーザーの住所(都道府県)と氏名を公式ツイッター上でさらしたうえ、「警察に通報します」などと警告をおこなったことから、批判されていた。

同社によると、「ゴルスタはアプリとしてユーザーの個人情報は取得していない」が、この元ユーザーが過去に、ゴルスタのイベントに参加していたことから、氏名などを取得していたという。今回批判された個人情報(氏名、都道府県)をSNS上にさらす行為は法的にどんな問題があるのか。インターネット問題にくわしい清水陽平弁護士に聞いた。

●どんな法的問題があるか?

インターネット上でも話題になっていることからも分かる通り、問題があるといえます。氏名は個人を識別することができるものであり、個人情報に当たるものであることは明らかですので、収集した個人情報を、本人の同意なく目的外に利用してはいけないですし、また、第三者に提供することもしてはいけません。

まさか収集した個人情報をツイッターにさらすということが目的とされていることはないでしょうし、また、公表(第三者への提供)について了解を得ていたということもないでしょう。ですから、個人情報保護法に抵触する行動を取っているということができます。

また、氏名そのものがプライバシーの対象となるかについては議論があり得るところですが、都道府県と組み合わせることで、全くその人を知らない第三者には分からないとしても、その人物の属性の幾つかを知る者から見れば、誰のことを指しているかを認識することが可能になり、プライバシー情報に当たると見ることができると思われます。そのため、プライバシー侵害と見る余地もあります。

さらに、具体的にどのような形で投稿したのかは分かりませんが、当該ユーザーが迷惑行為をしていたということを含めてさらしていたようです。そうだとすると当該ユーザーの社会的評価が下がることになってしまうため、名誉権侵害が成立する余地もあります。

ただし、やり過ぎているとは思いますが、刑法上違法とまで評価できるような行動とまでは言えないのではないかと思います。

●炎上のリスクを避けるためには?

炎上の「リスク」は、当然のことですが、炎上の「前」に発生しています。炎上が発生している場合は、それは「リスク」ではなく「クライシス」という局面になります。炎上は様々な要因で発生しますが、リスクを避けるためには、リスク要因をいかに減らせるかということにかかってきます。

今回のケースでは、従業員の違法行為と言われかねない行為のほか、批判は一切許さず、批判をしたらアカウントを削除するといった「言論統制」と評されるほどの行動が、社会的に見て行きすぎたものであることが主たる要因のようです。

個人情報をSNSにさらすといった行為は、法的にはともかく、社会的に見ても許されることではないということは、一般的に理解できることではないかと思います。このような、社会的に許されない行動を取らないよう、従業員教育を徹底することができていなかったということが問題といえます。

また、そもそも問題であるということが事前に分かっていれば、これを改めることが可能だったはずです。「言論統制」という点は、そのような評価がされているということ自体から、ある種の異常な状態になっているということが理解できたはずです。そのため、一般社会から見たらどのように見られるのか、という客観的視点が欠けていたことが問題といえそうです。

炎上リスクを避けるための方法といっても、それほど難しいものではありません。一つの指標としては、社会的に見て許されないことはしないよう従業員教育を徹底する、社内・業界独自のルールが一般社会ではどのように見られるのか客観的視点を持つ、ということが挙げられるのではないかと思います。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

清水 陽平
清水 陽平(しみず ようへい)弁護士 法律事務所アルシエン
インターネット上で行われる誹謗中傷の削除、投稿者の特定について注力しており、総務省の「発信者情報開示の在り方に関する研究会」(2020年)、「誹謗中傷等の違法・有害情報への対策に関するワーキンググループ」(2022~2023年) の構成員となっている。主要著書として、「サイト別ネット中傷・炎上対応マニュアル第4版(弘文堂)」などがあり、マンガ「しょせん他人事ですから ~とある弁護士の本音の仕事~」の法律監修を行っている。

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