島野 由夏里 弁護士 インタビュー
弁護士を目指したきっかけ
私は経済学科出身ですので、大学に入って最初から弁護士を志していたわけではないんです。ただ、幼稚園のときから何か資格は持っておきたいという気持ちはあったので、周りが色んな資格取得を目指して勉強しているのを見ている中で私も勉強を始めました。
私、元々ネガティブな性格で、すぐ自分は一人ぼっちだって感じるんですよ(笑)。そんな一人ぼっちな人と話をしたいと思ってカウンセラーになりたいと考えていたこともあって、法律系の仕事の中でカウンセラーに最も近い弁護士になりたいと思うようになりました。
弁護士の仕事は法律問題を処理するだけではなく、クライアントが何に悩んでいるか読み取ることがとても大事だと思うので、「会話」ということが重要になってくると思うんです。修習時代に、「自分は法律以外のところが得意な弁護士だ」と言っている弁護士に会いましたが、なるほどなと思います。
印象に残っている案件
民事では、結構ドロドロな事件が多いですね。どれも思い入れのある事件ばかりで特に印象に残っているというのは難しいのですが、不貞の慰謝料請求の案件です。
最初はクライアントがとにかく辛そうで、離婚をしたいとおっしゃっていて、なんとなく腑に落ちないところがあったのですが、だんだん話を聞いていくうちに本当は離婚したくないんだということを確信して、離婚しないまま、配偶者は被告にせず、尋問もせず訴訟を、という道を提案したんです。
当然慰謝料額は少なくなるということも説明しましたが、クライアントはそちらを選びました。私に離婚したくないことを隠しながら(笑)。
そしたら3年後に、そのクライアントから連絡があって、息子が生まれましたと写真を送ってくれたんです。頑張って配偶者と修復したんですね。可愛い子で、「この子が自分を生かしてくれている」と楽しそうに語ってくれました。3年前にお金にこだわらなくて本当に良かったなぁとしみじみ感じました。
仕事の中で嬉しかったこと
クライアントから感謝される、喜ばれるということはもちろんですが、うちの子が何年か後に私が知っているときより幸せに生きてくれているのを見ると一番嬉しいです。私は、クライアントのことをうちの子と呼ぶことが多くて、特に刑事のクライアントさんはみんな「うちの○○」です(笑)。
当時は手探り状態から始めて色々試行錯誤で活動してたけれど、あのときあんなに困っていた子が今幸せを感じられる生活をしている、やっぱりあの選択で間違ってなかったんだ、あれで良かったんだっていうのが実感できるのはすごくほっとするし嬉しいです。
これは私が裁判官でも検察官でもなく、弁護士という仕事を選んだきっかけにもつながるんですが、クライアントとずっと関わっていけるのは弁護士だけなんです。裁判官も検察官も異動がありますし、事件が終わった後、何年も経った後の当事者のことを知ることはできませんよね。
やっぱり一度関わったクライアントですから、その後のことも気になりますし、幸せであってほしいと思います。
弁護士になって大変だと感じること
そろそろ体力的にきついですね(笑)。登録したてのころは不眠不休でもいけましたし、食べる時間もほとんど無かったんで野菜ジュースとか栄養ドリンクだけでも平気だったんですけどね。
あとは、他の弁護士さんと弁護団を組んで事件にあたるときは、心強さもありますが、大変です。弁護士が何人も集まったら価値観は当然違いますので、方針決定の際はみんなが悩みます。
それから、やはりクライアントの辛そうな姿を見るのはこちらにとっても一番辛いものがあります。四六時中泣きながら電話がかかってきたり、保釈が認められずに号泣する姿を見ていて、何とかしてあげたくても証拠上どうしようもないときなど、いたたまれない気持ちになります。
休日の過ごし方
愛犬と過ごしたり、欧州サッカーを見たりですね。2年ほど前イギリスに住んでいたのでそのときサッカーにはまって、今でもイングランドプレミアリーグをよく見ます。チェルシーが好きで、見られないときはBBCのホームページで文字実況を見ながらの”文字観戦”もしますよ。
学生時代
女3人で徹夜でカラオケしてそのまま始発まで駅のロータリーで歌うというようなことをよくしていました(笑)。そのほかの時間は、大学の図書館を利用して司法試験の勉強をしたり。大学の授業に対しては真面目とは言い難い状況でした。
私は法学部でなかったこともあり、3、4年になると周りで一緒に勉強していた子がみんな就活をして、卒業するとどんどん就職していって孤独になったんですけど、私は潔く無職になりました。
そういうことがあったもので,司法試験の勉強は精神的にも本当に辛かったんですが、絶対に受からなきゃ駄目だというプレッシャーが妙に楽しくもあったので(笑)、何とか乗り越えて合格することができました。
私は1年半だけロースクールで教えていたことがありますが、みんな健全に勉強していて、私たち旧世代と変わったなと実感します。そっちの方が健康にはもちろん、人格形成上も良いんでしょうね。
弁護士としての信条・ポリシー
クライアントにとっては法律相談・訴訟というのは長い人生の中の一つの事件ですので、その位置づけを忘れず、クライアントのその後もしっかり考えるようにしています。今後の人生をより幸せに生きるために訴訟等をするのであって、訴訟の結果だけに振り回されてはいけない、その先どういう影響があるかを一緒に考えようと。
それから私は何があってもクライアントを信じるようにしています。証拠上、構造上主張が通らないだろうと予測できる事案でも、心では必ず信じています。そんなとき、心と頭が切り離される妙な感覚になるのですが、信じたことが正しくても正しくなくても、裁判官が信じてくれなくても、誰か一人でも最後まで信じてくれた人がいるという事実が、彼らの今後の人生にとって良い影響を与えてくれるんじゃないかなと思っています。
依頼者に対して気をつけていること
私のところに来られるお客さんは一見さんが多いのですが、最初は初対面で、気持ちの高ぶりなどもあり、希望を聞いても「先生、どうすれば良いんですか?」とおっしゃったり、言葉に出している希望と本当の希望が必ずしも合致していなかったり、分かりづらいんですが、そこを時間をかけてゆっくり聞きだすように気をつけています。
今後のビジョン
独立したばっかりなので、まずはしっかりこの事務所をやっていきたいというのが一番です。
あとは、事務所を法人化して金沢オフィスを設立予定です。後輩の子が登録予定なので、しばらくは一緒にやろうという話になっています。ロースクールで教えたことはありますが、新人弁護士の指導は初めてなので楽しみです。金沢でも弁護士はやや飽和状態と聞きますが、彼が今後できるだけやっていきやすいようにサポートしていきたいです。