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美容院で切られすぎて、女性なのに「坊ちゃん刈り」…エクステもつけられず苦悩
画像はイメージです(parinyabinsuk/PIXTA)

美容院で切られすぎて、女性なのに「坊ちゃん刈り」…エクステもつけられず苦悩

美容院に行って、お願いしたのと全く違う髪型にされて困ってしまった経験はありませんか。弁護士ドットコムの法律相談にも、ひどい仕上がりになってしまった人から悲痛な叫びが多数寄せられています。

ある男性は、家族の一人(20代女性)が先日、美容院でありえない長さまで短くされてしまったと相談を寄せています。女性は肩くらいまで髪がある写真を見せてカットを頼みましたが、仕上がりは「坊ちゃんがりぐらい」の短さで、エクステなどもつけられない程だと言います。

また別の女性は、髪の毛がガタガタ、左右は非対称で「素人がやってもそうはならないだろう」と言う髪型にされ、責任者も非を認めたと言います。

このように美容院で髪を短く切られたり、ひどい仕上がりにされたりしてしまった場合、返金や無償での切り直しなど損害賠償を請求することはできるのでしょうか。足立敬太弁護士に聞きました。

●気に入らなければ損害賠償義務が発生すると考えるのは早計

美容院などでのカット依頼も契約の一つなのでしょうか。

「美容院でのカット等の依頼は、美容の役務を提供する『準委任契約』に該当すると考えられます。これは事実行為の委託を受け、作業を行う契約のことです(民法656条)。したがって、債務(法律上の義務)の不履行があれば、損害賠償義務を負うことになります。

ただカットの仕上がりを顧客が気に入らなければ、当然に債務不履行として損害賠償義務が発生すると考えるのは早計です」

なぜでしょうか。

「カットなどの依頼をする際に、デザインについての顧客のオーダーはある程度抽象的であることが一般的です。

モデルの写真を示して『このようにしてほしい』とオーダーしても顧客とモデルは別人な訳ですからそのままカットしても似合うとは限りません。頭髪の状態や性質には個人差があり、また年齢や頭髪のコンディションによって同じカットを施しても結果が同じとなるとは限りません。

このような美容室における美容の役務を提供するという準委任契約(つまり『美容契約』)の特徴を考慮すると、美容師はその抽象的に求められたデザインの髪型とするために合理的なカット手法を採用すれば、美容契約上の義務違反や違法行為は問題とならないと考えるべきです」

確かに、美容室などに行った際には、理想の髪型の写真を見せながら「こんな感じで」と抽象的にしか伝えられません。

「はい。美容師はご自身の美的センスに従ってこの抽象的なオーダーに合わせたカット手法を採用すれば損害賠償義務は生じないと言えます。しかし、今回のように伝えた希望と極端に長さが違うような場合には、契約上の義務違反にあたり、カット代の返金やカットのし直しなど理容院側が損害賠償義務を負う可能性も十分考えられるでしょう」

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

足立 敬太
足立 敬太(あだち けいた)弁護士 あい弁護士法人富良野・凛と法律事務所 旭川OFFICE
北海道・富良野在住。投資被害・消費者事件や農家・農作物関係の事件を中心に複数の分野を取り扱う。「常に相談者・依頼者様の視点に立ち、分かりやすい説明を心がけています」

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