かつてほどの勢いはなくなっているものの、依然レジャーとして人気の高いパチスロ。そのパチスロの最新機種で「大当たり」が出にくくなるという不具合(バグ)があり、騒動となっている。
毎日新聞などによると、バグがあったのはパチンコ・パチスロメーカーのニューギンが製造したパチスロ機「信長の野望 天下創世」。この機種では本来、「大当たり」が出やすい場面でボタンを押す順番が表示されるはずだったが、一部に表示されない台があった。このバグが出ると、当たりの確率が大幅に減るという。同社は全国の1万2000台の回収を決定し、店舗には稼働停止と撤去を要請した。回収費用や営業補填は同社が負担するという。
今回、店舗側はある程度の補償が受けられるかもしれないが、問題の台でプレイしていた客たちはどうだろう。一部の店舗では客への返金もあったというが、ネット上では「分かっていればプレイしなかった」「対応が遅い」「不具合は客へもサイトなどで直接告知すべきだ」などといった不満の声があがっている。そのような客は、メーカーに対して損害賠償を請求できるのか。好川久治弁護士に聞いた。
●メーカーは客にとっては「第三者」なので、直接責任を問うのは難しい
「『パチスロで遊ぶ』というのは、客の立場からみると、店と契約を結んで、店の提供するサービスを受けているという関係です。来店客にとって、パチスロ機が『本来の機能を発揮する』ことは、その契約の前提でしょう。したがって、もしパチスロ機に不具合があり、十分なサービスを受けられなかったとすれば、客はまず、店に対して『サービス契約違反』を追及するという構図が考えられます。
なお、このような構図で店の責任を追及するための条件としては、最低限、『大当たりが出やすい場面でボタンを押す順番が表示される』という基本的機能が予め告知されていて、顧客がそれを承諾してサービスを受けていることが必要となるでしょう」
——では、メーカーの責任は追及できないのか?
「客と店という関係性からみると、メーカーは『第三者』です。客とメーカーの間に『契約』は存在しません。そのため、客がメーカーを訴える場合は、メーカーの『不法行為責任』があったと証明できるかどうかという話になります。
その場合、不具合の発生を承知でパチスロ機を出荷したとか、不具合を承知しながら合理的な期間内に告知と回収を行わず放置したというような、よほど悪質なケースでなければ、客が直接、メーカーの責任を追及することは難しいと思います。
この点で、公園の遊戯具に欠陥があって、遊んでいた利用者が怪我をした場合に、遊戯具メーカーが製造者として責任を問われるケースとは異なります」
なるほど今回、メーカーは店に対して補償を行うことで、一定の責任は果たしているようだが・・・・。一説によると、客の不満にどう対処するかによって、顧客満足度は大きく変わるそうだ。この事態をどう克服し、信頼回復につなげていくのか、いまこそメーカー側の手腕が問われているのではないか。