新しい年が明けた。昔ながらの黒豆やきんとんなどが入った「おせち料理」をつくって家族で食べる人も多いだろう。自宅で作るのが面倒な人にとっては、業者が販売しているおせち料理を購入することで、手軽に楽しむこともできる。
業者が販売したおせち料理で記憶に残っているのは、2011年の正月に起きた「スカスカおせち」騒動だ。このおせちは共同購入サイト「グルーポン」を通じて、定価2万1000円の半額の1万500円で販売された。届いた商品を開けてみると、商品説明の見本写真と違ってスカスカだったため、ネットで大きな話題になった。
当時、おせちを製造した飲食店やグルーポンに批判が集中したが、グルーポンは2014年11月、おせち料理の取り扱いを再開すると発表。過去3年間におせちの販売で事故がなかった業者を選定するなどして、改善したことをアピールしている。
今回は「おせち」をめぐるトラブルが起きないことを期待したいが、一般論として、もし業者が販売したおせちが見本と違ったら、どうすればいいのか。ネットを通じて購入した人は、返金してもらえるのだろうか。消費者問題にくわしい好川久治弁護士に聞いた。
●通信販売には「クーリングオフ」が適用されない
「インターネットなどを通じた通信販売には、訪問販売や電話勧誘販売などのように『クーリングオフ(無条件解約)制度』の適用がありません。
もし販売業者が広告等で『返品には応じられない』と表示していた場合、消費者は申込みを撤回したり、契約を解除したりすることができません」
好川弁護士はこう説明する。では、業者が「返品に応じる」と表示していた場合はどうだろうか。
「広告等で、返品や交換に応じる旨の特約表示がある場合でも、販売業者が取り決めた返品ルールに従わなければなりません。したがって、通常のクーリングオフと同じ条件で返品を要求できるとは限りません。
たとえば、業者のルールでは、通常であれば商品受領後8日以内とされている『クーリングオフの期間』が短く設定されたり、返品のための送料を消費者が負担することになっていたりするケースもあります」
もし、「返品」について、何も記載がない場合はどうなのか。
「販売業者が返品に関する表示を何もしていなければ、消費者は商品到着後、その日を含めて8日以内であれば、送料自己負担で、商品を返品することができることになっています。おせち料理のインターネット通販でも同じです。
特にインターネット通販の場合は、広告画面で表示するほか、契約の最終申込み画面でも、わかりやすく表示しなければなりません」
●あまりにも酷い「スカスカ」おせちは返品できる
では、「スカスカ」であることを理由に返品を求めることができるのか。
「これまで説明した返品の話は、あくまで品違いや品質の問題がないことが前提です。
2011年に問題となった『おせち料理』の通販のケースでは、写真を見る限り、事前に広告表示のあった商品とは似ても似つかない、スカスカ状態で購入者に届けられています。
たしかに広告の写真は、あくまでも見本ですから、多少の食い違いなら消費者も納得するでしょうし、我慢すべきですが、その落差があまりにも酷いケースでは、契約で約束した商品とは異なる商品が届けられたことになります。
ですから、購入者は事前に約束した品質、内容を備えた商品との交換を要求し、それがかなわないなら契約自体を解除することが可能です(債務不履行責任)。
また、これほど酷い広告表示をして販売業者が商品を提供していたとすれば、契約内容について『不実の告知』があったとして、消費者契約法に基づき購入申込みの意思表示を取り消すか、さらに詐欺を理由に取り消す(民法96条)ことも、考えられるでしょう」
好川弁護士はこのように説明していた。
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