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宗教2世、書面で被害“通報”する仕組みを要望「積み上げれば団体へのイエローカードになる」
法務省の竹内努司法法制部長(右)に署名を提出する山本さん(2022年12月26日、弁護士ドットコムニュース)

宗教2世、書面で被害“通報”する仕組みを要望「積み上げれば団体へのイエローカードになる」

高額献金を規制する新法を実効性あるものにしようと、宗教2世団体が12月26日、消費者庁や法務省に要望書を提出した。求めているのは、全国で吸い上げた被害実態を書面として、団体や行政庁に集める仕組み(書面送付制度)。

世界平和統一家庭連合(旧統一教会)やエホバの証人の2世当事者でつくる「宗教2世問題ネットワーク」の山本サエコさんと高橋みゆきさん(いずれも仮名)らが担当者に手渡した後、国会内で開かれた野党ヒアリングで趣旨を説明した。

高橋さんは書面送付制度が広がり、自身のような被害の実態が多く積み上がれば「常軌を逸した団体に対して、イエローカードを出すことになる。悪いことをしている団体に気づきを与えるための、けん制ができるのではと思っています」と期待を込めた。

●まだ声を上げられない「仲間」のために

新法では禁止行為(4条)や配慮義務(3条)を定めているが、その行為に当たることがあっても報告がなされるかが課題となっていた。ネットワーク監事の阿部克臣弁護士は「主に弁護士が内容証明を送ることが前提となる。消費者庁には周知してほしいし、法務省には法テラスを活用した費用面の措置をお願いしたい」と説明した。

想定しているのは、相談を受けた弁護士が内容証明郵便で、当該団体、行政庁、信者本人の三者に送る制度だ。新法が来年1月5日に施行されるのを控え、年内に間に合わせるために動いたという。山本さんは2日間徹夜し、新法を説明するイラスト入りのチラシも作成した。「法律の文言は難しい。中学生でも分かるようなものにしました。法務省や消費者庁の方に使っていただきたいです」

メンバーもそれぞれ仕事などがあるため、夜にしかオンラインで集まって相談できないという。合間を縫って活動するのは、せっかくできた新法を使えるようにしたいとの思いからだ。

野党ヒアリングに参加した統一教会2世のVTuberもるすこちゃんさんは「教会の解散に向けた情報提供として、書類送付制度が役に立てばいいと思う。現在30代の同世代が多いので、声を上げられなかった人が使える制度になってほしい」と訴えた。

しかし、自分が制度を使うとしても70代の両親には書類は送らないという。「食べるものも削って、世界平和のためと言って献金してきた。50年間かけてきた人生を否定するのは、あまりにも酷です」と説明する。

自身は22歳の時に信者同士の祝福結婚をして、7日間の断食も経験した。生まれた子どもの一人は障害があり、亡くなったという。「統一教会の教義では理解できない。過去の経緯で痛いほど分かったので、正しいことをしていきたいんです」。

●法テラスの費用の要件緩和求める声も

阿部弁護士は、現状でも弁護士が内容証明を送ることはできるが、費用が数万円かかると指摘している。

ヒアリングでは、立憲民主党の長妻昭衆院議員から法務省に対して、被害者が無償で法テラスなどを使えるよう求める場面があった。民事法律扶助制度は原則立て替えで、資力の要件もある。岸田文雄首相が「対策を拡充する」と国会で答弁したことを受け、検討するよう訴えた。

山本さんは、書面を送付する主体として、弁護士だけでなく児童相談所職員や、地域の人なども求めていきたいとしている。「私は5歳くらいの時に『おかしいかも』と思いました。子どもにも使いやすい制度になるよう、ありとあらゆるところに配って周知したい」と話している。

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