歌手の華原朋美さんが、所属事務所「伝元」の代表を務める大野友洋さんと離婚し、年内に事務所を退所することを明らかにした。文春オンラインで離婚が報じられたことを受け、ツイッターで「文春さんが言う通りが全てです」と認めた。
彼女が抱えているのは、離婚という夫婦間だけの問題ではない。代表と所属タレントとしても、ギャラの支払いなどをめぐり、トラブルがあるようだ。
報道(週刊文春12月22日)によると、華原さんは「Tシャツやパーカーなどのグッズも勝手に販売されていて、収益の分配があるかわかりません」などと語ったという。華原さんは、ツイッターで、大野さんに「仕事した分払って」と支払いを求めている。
華原朋美は伝元タレントではありません。勝手にされた所属タレントから華原朋美の名前を消してください文春さんが言う通りが全てです。ここまで来て離婚してませんなんて文春さんによくも嘘言えたもんだ。離婚する時に証人として大野氏の父親が記載してます。伝元、大野友洋氏、華原が仕事した分払って pic.twitter.com/XPrAA6bcyr
— 華原朋美 (@kahalatomomi_tk) December 22, 2022
本人の許可なくグッズを販売すること、収益を所属タレントに支払わないことには、どのような法的問題があるのだろうか。芸能・エンターテイメント法務に詳しい河西邦剛弁護士に聞いた。
●グッズ販売、ほぼすべての「芸能契約書」に明記
ーーそもそも、芸能事務所とタレントはどのような契約を結ぶのでしょうか。グッズの販売などについても明記されているのでしょうか。
芸能事務所とタレントはいわゆる芸能契約を結びます。
ほぼすべての芸能契約書には、芸能事務所側がタレントの写真や名前を使用し、グッズを販売することが可能と明記されています。これは、法律的にはタレントが自己の肖像権の利用を芸能事務所に許諾しているということになります。
そして、芸能契約書には、タレントが自己の肖像等を利用させる対価、すなわち物販売上についてのギャラがもらえるとなっています。
人数が多い大手アイドルグループは固定の給料制が多く、グッズの売上からは歩合によるギャラは発生しないというケースもあります。しかし、華原さんのような個人タレントの場合は歩合制のケースがほとんどです。たとえば、経費を除いた利益を50:50で分配するというケースがオーソドックスです。
●タレント側は芸能事務所の売上を知る手段に乏しい
ーータレントが芸能事務所側と「芸能契約」を結んでいるにもかかわらず、契約どおりギャラが支払われていない場合は、どのような法的問題が生じるのでしょうか。
このような場合は報酬未払いですから、契約違反となり、タレント側からの契約解除や損害賠償の対象になります。
しかし、実際のところ、タレント側は芸能事務所がいくら売り上げているのかを知る手段に乏しく、芸能事務所から開示された売上を裏取りする方法もほとんどありません。たとえば、作曲家や作詞家の場合には、JASRACに直接問い合わせをすれば、印税分配の裏取りができる仕組みになっています。ところが、グッズや出演料については、裏取りをするためのこのような仕組みはありません。
しかも、業界慣習として、タレント本人が支払い元に金額を確認するのは基本的にNG行為とされています。もちろん、大手を中心にきちんと支払いをしている芸能事務所もありますが、小さい事務所ほどチェック体制も乏しく、事務所によるギャラの中抜きが起きやすい構造になっているという問題があります。
仮に、事務所側がタレントを「騙して」、本来支払わなければならないギャラよりも低い金額しか支払わなかったとすれば、契約解除の問題だけでなく、刑事上の詐欺や業務上横領に該当する可能性も出てきます。