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マスク「送りつけ商法」に注意喚起…「覚えのない『代金引換』の荷物は受け取らないで」
政府から配布された布マスク(4月24日、弁護士ドットコム撮影)

マスク「送りつけ商法」に注意喚起…「覚えのない『代金引換』の荷物は受け取らないで」

新型コロナウイルス対策で政府がマスクを配布することに便乗して、一方的にマスクを送りつけ、高額な代金を請求する「送りつけ商法」に消費者庁が注意を呼びかけている。

報道によると、同庁には身に覚えのないマスクが宅配便で届いたなどの相談が寄せられているという。まったく知らない相手からマスクが送られてきた場合は、どうしたらよいのだろうか。

●一方的に送りつけられたマスクの代金を支払う義務はない

もし宅配便を受け取ってしまった場合は、代金を支払わなければならないのだろうか。消費者問題を扱っている大和幸四郎弁護士はつぎのように説明する。

「業者に言いくるめられないように、まず契約の仕組みを知っておきましょう。商品の売り買いをめぐる契約を『売買契約』といいます。業者が商品を売り、支払いをうけるためには、この契約が成立している必要があります。

商品を一方的に送りつける行為は、業者側が消費者に対して『購入してください』と申し込む意思表示に過ぎません。それだけでは、契約は成立しません。

売買契約が成立するのは、『申込み』に対して『承諾』があり、販売する側と購入する側の意思表示が合致したときです。

消費者から申し込まれたわけでもない商品を一方的に送りつけておいて、『返送しなければ契約が成立する』といった主張をしても、法的には認められません」

つまり、一方的に送りつけられた荷物を受け取っただけでは売買契約は成立しておらず、受け取った側が支払いをする義務もないということだ。

しかし、「代金引換」で荷物が届くということもありうる。大和弁護士は「身に覚えのない『代金引換』の荷物は受け取らないことです。お金をいったん支払ってしまうと、取り戻すのは簡単ではありません」と話す。

●荷物を受け取っても「14日間は、商品を使用・消費しないで」

では、送りつけられたマスクはどう取り扱えばよいのだろうか。売買契約が成立していないのであれば、届いたマスクを使用しても問題はないのだろうか。

「特定商取引法は、こういった問題に対して規制を設けています。商品購入の意思がないのなら、商品の送付があった日から数えて14日間は、商品を使用・消費しないでください。もし業者が引き取りに来た場合などは、返還しなければなりません。

この期間内に使ったり、処分したりしてしまうと、購入する意思があったとみなされますので気をつけてください。

一方、この期間を過ぎると、業者は送り付けた商品の返還を請求することができなくなります。つまり、14日間が経過すれば、受け取った側は使用・消費しようが捨てようが自由に処分することができます」

もし受け取った荷物の中に請求書が入っていたり、代金を支払うよう言われたりした場合も「絶対に代金を支払わないでください」と大和弁護士は警鐘を鳴らす。

「さきほど述べたように、送りつけられた側である消費者が承諾しない限り、契約は成立しません。つまり、『返品しない場合は承諾したものとみなす』といった文言が書かれていても、それは無効です」

プロフィール

大和 幸四郎
大和 幸四郎(やまと こうしろう)弁護士 武雄法律事務所
佐賀県弁護士会。2010年4月~2012年3月、佐賀県弁護士会・元消費者問題対策委員会委員長。元佐賀大学客員教授。法律研究者、人権活動家。借金問題、相続・刑事・男女問題など実績多数。

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