新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、大学のサークル活動の合宿や懇親会などが中止となったケースは少なくない。
しかし、キャンセル料を払わない学生に悩まされているサークルもある。弁護士ドットコムにも「キャンセル料を払ってくれない人がいる」という相談が寄せられている。
相談者によると、あらかじめキャンセル料が発生する可能性があることはサークルのメンバー全員に周知しており、了承が取れていたという。
ところが、各メンバーにキャンセル料支払いに関する案内を送ったとたんに、サークルを辞め、音信不通になった学生がいた。学生はあらゆる通信手段をシャットアウトしており、相談者らは音信不通になった学生の住所や保護者に連絡することを検討中だ。
しかし、それでも支払いがなかった場合、どうすればよいのだろうか。河内良弁護士に聞いた。
●訴訟しても「コストが見合わない」可能性
ーー相談者はどのように対応すればよいのでしょうか
「キャンセル料の支払いを強制するための手段としては、訴訟を提起するという方法があります。
しかし、仮に訴訟を起こしたとしても『キャンセル料の支払いを合意していたかどうか』『新型コロナウイルス感染症の拡大に伴うキャンセルである以上、不可抗力ではないか』という点で支払いを拒んだ学生が争ってくる可能性もあるでしょう。
そうすると、訴訟の勝敗は不透明になってきます。
なにより、このようなケースでの『キャンセル料』の1人あたりの負担額は極めて少額(数千円程度)であると予想されます。
この金額を回収するのに訴訟を起こすというのは、たとえ少額訴訟手続きによったとしても、まったくコストが見合わないのではないかと思われます。さらに、訴訟提起はキャンセル料を回収しに行く側がしなければなりません」
●キャンセル料を支払わない事態を予防するには?
ーーつまり、そのようなキャンセルが発生することを見越して行動するべき、ということでしょうか
「そうです。今回の新型コロナウイルス感染症の流行以前から、予約のドタキャントラブルがテレビ等で取り上げられることはありました。このようなトラブルは今後も起こり得るでしょう。
そこで、キャンセル料トラブルを起こす可能性を見越して、あらかじめキャンセル料相当額を預かっておくことが最善の策だと考えられます。
このようにしておくと、キャンセル料相当額をあらかじめ預けることをよしとしない学生は合宿や懇親会に不参加を表明するでしょう。
仮に参加表明後にキャンセルして、『預けた金を返してほしい』という学生が現れたとしても、少額すぎてコストが見合わない訴訟提起を検討するのはその学生側になります。そのため、予防策として最善ではないかと思います」