飲食店や接客業で大事なのが「身だしなみ」。従業員の服装や髪型チェックを入念におこなう店もあるようですが、弁護士ドットコムには過剰なチェックに困り果てている従業員から複数の相談が寄せられています。
回転寿司でパートをしている女性は、仕事に入る前に責任者から身だしなみチェックを受けることになっています。その際、スマホを持っていないか確認するため、粘着テープでズボンの上まで入念にコロコロされるそうで「不快です。違法ではないのですか」と聞いています。
また、遊技場のホール担当という女性は、不定期で身だしなみチェックがあります。男性スタッフは「俺が嗅いだらやばいから」と、女性スタッフに相談者の体臭を嗅がせ、「どう〇〇さんの体臭?今後の仕事に支障きたす?笑」、「んー、汗臭いです!」といった会話を笑いながらされたそうです。
女性は「恥ずかしい。これは人権侵害になりますか?」と訴えます。
こうした身だしなみチェックは、問題にならないのでしょうか。大山弘通弁護士に聞きました。
●過剰な身だしなみチェック「セクハラやパワハラに該当する可能性」
回転寿司でパートをしている女性は、ズボンの上をコロコロされているそうです。
「コロコロをされることについては、セクハラに該当する可能性があります。セクハラとは、職場における労働者の意に反する性的言動であって、労働者の対応によって、労働者に不利益を与えたり職場環境を害したりするものです。
性的言動の例には、身体への不必要な接触と言った性的な行動も含まれます。スマホの確認のために、あえてコロコロテープを利用して体を触る必要があるとは思えません。さらに、労働者がコロコロを止めて欲しいと何らかの抗議をしながらも、コロコロを続けているのであればそれはセクハラになり得ます」
遊技場のホール担当という女性は、体臭を嗅がれているそうです。
「これは、パワハラに該当する可能性があります。パワハラは、優越的な関係を背景に、業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動により、就業環境を害するものです。
今回の件は、身だしなみチェックに名を借りて優越的関係を背景に、業務に必要とも思われないからかいのため、労働者を羞恥させて就業環境を害するものですから、パワハラに該当すると考えます。
今年5月には、いわゆるセクハラやパワハラをふくむ職場のハラスメント対策を定めたハラスメント規制法が成立しました。この法律によって、セクハラ・パワハラに対して声を挙げやすくなり、事業主には相談体制の整備などの防止対策をとることが義務付けられました。積極的に声をあげるようにしましょう」