2019年04月16日 16時51分

アスベスト被害、35年以上たってからの死 元船員遺族が会社提訴

アスベスト被害、35年以上たってからの死 元船員遺族が会社提訴
原告の男性

肺の病気で2015年に亡くなった男性(当時93)について、原因は漁船に乗っていた頃のアスベスト(石綿)被曝にあるとして、長野県に住む長男(66)が4月16日、マルハニチロ(当時は大洋漁業)に対して、3850万円を求めて、東京地裁に提訴した。

訴状によると、亡くなった男性は1948〜1979年までの30年以上、機関士として捕鯨船などに乗船し、船舶の保守点検などに携わった。1回航海に出れば、半年以上、家に戻らないこともあったという。

アスベストは不燃性のため、保温・断熱や火災防止のため、機関室など男性が作業する場所の多くで使われていた。

長男側は、船の揺れに加え、発電機などの振動もあって、恒常的な被曝があったと主張。会社の安全配慮義務違反を問うている。

●公的な「船員保険」が業務起因性を認める

男性は2002年から石綿肺だとして経過観察されてきたが、2015年に症状が悪化。呼吸機能障害をともなう「びまん性胸膜肥厚」と診断され、2カ月ほど後に死亡した。2017年、病気が職務上のものと認められ、船員保険が給付された。

アスベストは「静かな時限爆弾」とも言われ、潜伏期間が長く、発症後に苦痛をともなうことが知られている。

提訴後、東京・霞が関の司法記者クラブで記者会見した長男は、「亡くなるまでの2カ月間の父の苦しみを思うと、会社側が許せなくなった」と理由を述べた。

●予見可能性はどこまで認められる?

遺族が船員保険を申請した際は、マルハニチロ側も協力し、過去の船員記録を提供している。また、書面でもアスベストの使用を認め、「曝露の可能性が高い」とも記述。認定を後押ししたとみられる。

そこで裁判の争点になりそうなのが、アスベストの危険性についての予見可能性だ。

男性側は、戦前からアスベストによる健康被害のデータがあると指摘。「労働基準法」(1947年)や「じん肺法」(1960年)がアスベストなど「粉じん作業」への配慮を求めていることなどをあげ、健康被害を予見できたとしている。

その上で会社側が労働者に対して、アスベストの飛散防止など適切な対策をとらなかったとして、安全配慮義務違反があると主張している。

対するマルハニチロ側は、「訴状が届いていないのでコメントは控えたい」と述べた。

(弁護士ドットコムニュース)

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