課長のパワハラで精神的な苦痛を受け、部下の正規職員がすべて自宅療養に追い込まれたーー。こうした問題が埼玉県中部の嵐山町役場で起きたことが、明らかになった。約140人が働く役場で何があったのか。対応にあたった総務課の担当者は取材に対し、「たいへんお恥ずかしい話で」と事態を語った。
●課長「記憶にない」
「自宅療養中の職員が復帰した際には、安心して仕事をしてもらうよう、人事の配慮を徹底するつもりです」。嵐山町総務課の担当者はこのように話す。
町によると1月21日付で、「業務の適正な範囲を超えて、暴言や威圧的な行為、侮辱、無視などの行為を繰り返し行った」として、50代の男性課長の行為を「パワハラ」と認定し、停職3カ月の懲戒処分をくだした。地方公務員法29条にもとづく処分だ。
課長が管理職を務めてきたA課(課長、正規職員の部下3人、臨時職員1人で構成)は、民間業者とも接することがある部署。ここに課長が異動してきたのが昨年4月。6月になって、「課長が威圧的な言動をしたり無視したりする」と、部下から人事担当に相談があった。
具体的には、再三にわたって「バカですか」と暴言を浴びせたり、にらみつけたり。さらには報告済みの事案なのに後日になって、「聞いていない」と怒ることもあったという。
課長の直属の上司にあたる副町長が複数回、注意に動いたというが、改善はみられなかった。部下3人への聞き取りでわかったパワハラ行為について、したかどうかを聴取しても、「記憶にない」「指導の範囲内のことだ」などと答えたという。
●部下3人、いずれも「3カ月の自宅療養」
部下3人は20代、30代、40代の男性3人。いずれも昨年12月中旬までに「3カ月の自宅療養を要する」との診断を医師から受け、現在は休職中だ。A課の業務がまわらず、町では別の課から応援に人員を出すなどして対応している。
なお、臨時職員1人は「業務で課長と接することがほとんどない」(総務課の担当者)。このため、自宅療養に追い込まれずに済んだという。
課長に対しては、1月21日朝、副町長から処分内容を直接伝えた。特段の抗議はなく、「そのままお帰りいただいた」(総務課の担当者)という。
●町長は処分なし
課長は4月下旬に復職する予定だ。部下3人も、その頃には復帰しているとみられる。総務課の担当者は「3人に安心して仕事をしてもらうよう、人事の配慮を徹底する。課長と一緒の部署にすることはありえない」と話す。
今回の問題を受け、町は、監督責任をとって副町長が1月の給料10分の1を自主返納することを決定。町長については、他自治体の事例などを踏まえ、処分は見送ったという。町では今後、ハラスメントを防ぐための研修などを実施し、再発防止に努める方針だ。