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保育事故「息子の死を無駄にしないで」両親、再発防止へ第三者委での検証要望
両親は亡くした息子・陽向くんの写真を持ち込んで会見に臨んだ

保育事故「息子の死を無駄にしないで」両親、再発防止へ第三者委での検証要望

どうして息子は死に至ったのかーー。2015年9月に埼玉県川口市の認可外保育園で生後3カ月の男児が死亡した事故について、男児の両親と代理人弁護士らが5月11日、川口市役所を訪れ、事故を検証する第三者委員会を設置するよう申し入れた。市は「前向きに検討したい」と回答したという。

申し入れ後、東京都・霞が関の厚生労働省記者クラブで会見した両親は、「同じような思いをするお父さん、お母さんが出ないように調査してほしい」「息子がどんな気持ちだったか。苦しくなかったか。辛くなかったか知りたい。息子の死が無駄にならないように、再発防止策などで役立ててほしい」と話した。事故がなければこの日、男児は1歳の誕生日を迎えるはずだった。

●大声で泣いているのに、抱き上げられることもなかった

男児の名前は「陽向(ひなた)」くん。市の調査などによると、事故当日、午前11時に預けられた陽向くんは、ベッドに寝かせられて以降、泣いていないときはなかったというほど、大声で泣いていたという。

しかし、保育士は陽向くんを抱いてあやしたり、なぜ泣いているか原因を探ることはしなかった。陽向くんは正午ごろまで泣いていたのが確認されているが、約15分後、保育士が発見したときには、下を向いて息をしていなかったという。

父親はこう語る。「息子は預けられて1時間近く、抱き上げられることなく泣き続けていた。息子の年齢では、泣くということがさまざなことを含んだ訴えだった。本当にこういった保育でいいんだろうかという思いがある。『なんで当たり前のことがなされなかったのか』という原因と、『今後どうしていけば、当たり前のことがなされるか』ということを徹底して(調査して)ほしい。こういう保育園は多いんじゃないかと思う」

事故当時、保育園で預かっていた子どもは、0〜4歳児の20人。園内には4人のスタッフがいた。人数の基準こそ満たしているが、事故が起きた時間帯は食事や昼寝の準備時間帯で、仕事量に比して人員が手薄だった可能性があるという。

代理人の寺町東子弁護士は、「どうして抱っこしなかったのか。保育士の単なる怠慢なのか、人手が足りなかったのか。保育の知見を持った方に検証してもらいたい」と申し入れの意図を語る。

「今回の申し入れは責任追及というわけではなく、保育行政としてどういう問題があったか検証して、役立ててほしいという趣旨だ。責任追及では、個別具体の話になってしまって再発は防止できない。保育士の仕事は非常に多く、今の配置基準では人手が足りないのは明らかなので、第三者委員会にはそういった面からの提言も期待したい」

●保育園は今も運営を続けている

陽向くんの死因は死後半年以上たった今も調査中だ。死因が窒息死などであれば、保育園の刑事責任を問える可能性があるが、乳幼児突然死症候群(SIDS)であれば難しいという。

こうした背景もあって、事故があった保育園は処分を受けることなく、今も運営を続けている。しかし、事故後、市が行った調査では、保育士の数が基準を満たしていないことや、寝ている子どもの呼吸を記録していないことが分かり、指導を受けているという。

母親は「経営を続けるのなら、しっかり子どもたちのことを見てほしい。川口市にも、こういう事故が起きた施設なのだから、(定期的な)立ち入り調査をお願いしたい」と話している。


一方、園長は弁護士ドットコムニュースの取材に対し、「弁護士から死因が分かるまでコメントしないように言われていますので、お答えできません」と話した。

(弁護士ドットコムニュース)

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