東京都内の社会福祉法人で働く女性職員3人が、育児のための短時間勤務制度を利用したところ、昇給幅を低く抑えられたことは不当だと訴えている裁判で、控訴審の第一回口頭弁論が1月18日、東京高等裁判所で開かれた。一審の東京地裁は昨年10月、「昇給抑制は違法」として法人に約70万円の賠償を命じる判決を下したが、原告と被告の双方が不服として控訴していた。
口頭弁論の後、東京・霞ヶ関の厚生労働省記者クラブで、原告とその代理人弁護士が会見を行った。原告代理人の岸松江弁護士は「原告が求めていたのは本来の昇給にしてほしいということ。そこが認められなかったため、控訴した」と説明した。
一審の東京地裁は、社会福祉法人が女性職員の昇給幅を抑えたことは、育児による時短勤務を理由に不利益な取り扱いをすることを禁じた育児・介護休業法に違反するとして、法人に対して差額賃金など約70万円の賠償を命じる判決を出していた。
●「1年間で多い人で3〜4万円の不利益を受けた」
裁判の原告である看護師や理学療法士として働く女性職員3人は、育児休業から復帰した後、同法人で、本来の労働時間である8時間より2時間少ない「1日6時間」の時短勤務制度を利用していた。労働時間が短くなることから、基本給が、4分の3に減額されることには納得していたという。
しかし、昇給幅までも規定の4分の3に抑えられたことは不当だとして、法人に本来の昇給数の地位にあることの確認と、これまでの昇給抑制による差額賃金、慰謝料など約180万円を請求。昇給のベースとなる勤務評価は「勤務の質に対する評価」であり、勤務時間の長さと連動させて「昇給幅」を決めるのはおかしいと主張している。
岸弁護士は「例えば、本来の勤務実績の評価通りであれば、4号給になるはずなのに3号給にしか昇給しないなど、普通の人より1年ごとに昇給が遅れていくことになる。額に換算すると、1年間で、多い人は3〜4万円、少ない人でも1万3000円程度の不利益を受けている」と指摘する。
原告の1人で、40代の看護師の女性は、会見で次のように述べた。
「基本給を減額することは聞いていたが、昇給抑制については取得前に、一切説明がなかった。昇給抑制をされたままでは、退職金まで不利益が続くことに納得がいかず、私たちは控訴している。裁判所にきちんと判断してもらって、多くの人が育休を安心して取れる制度になってほしい」