「毎日のように残業しているのに、会社が残業代を払ってくれない」。勤め先に対して、こんな不満を持ちながら、「サービス残業」をしている会社員は多いかもしれない。本来もらえるはずの残業代を支払ってもらうにはどうしたらいいのだろうか。働く人の法律問題にくわしい河野祥多弁護士が11月7日、オンライン授業サイト「schoo(スクー)」の生放送番組で解説した。
●会社が「証拠隠滅」に走るおそれ
弁護士ドットコムが企画・制作した番組で、河野弁護士が重要なポイントとして挙げたのが、残業代の請求や労働基準監督署への相談といった具体的なアクションを起こす前に「残業の証拠集め」をすることだ。なぜ証拠集めが重要なのだろうか。
「会社に相談すると、当然、『こいつは残業代を請求しようとしている』と気づきます。そうすると、会社が証拠隠滅に走るおそれがあるからです」
では、どういう証拠を集める必要があるのだろうか。
「典型的なものとしては、タイムレコーダー(タイムカード)の記録です。少なくとも会社にいた時間については、それで立証できます。
ただ、タイムレコーダーの場合、会社から『○時になったら、絶対に押せよ』という指示があるかもしれません。また、小さな会社の中には、そもそもタイムレコーダーがないところもあります。
そういう場合、会社のパソコンから、自分(のプライベートアドレス)や友だち宛てにメールを送るとよいでしょう。メールを送信した時間のタイムスタンプがつくので、少なくともその時間には、会社のパソコンの前にいたことが証明できます。
ほかにも、ツイッターから『残業中なう』と投稿するのでもかまいません。それらが積み重なることによって、『会社にいた』という証拠となります」
●Suicaの利用記録も「間接的な証拠」になる
一方で、会社や仕事内容によっては、パソコンやスマートフォンが使えないこともあるだろう。そういう職場の人はどう対応すればいいのだろうか。
「もし通勤で電車を使うなら、Suicaなどの利用記録も証拠の一つになるでしょう。
もちろん、午後11時に駅の改札に入ったからといって、それまで『会社にいた』という直接の証拠にはなりませんが、間接的な証拠を積み重ねていくことが大事です。
そのあたりは、仕事内容や環境によって違います。どういうふうに収集したらいいのか、あらかじめ弁護士などの専門家に相談すると、効果的な情報収集ができるでしょう」
河野弁護士はこのようにアドバイスしていた。
弁護士ドットコムでは、今後も月に1回のペースで、わかりやすい法律解説などをテーマに、schooのネット生放送番組を配信する予定だ。