2026年春に卒業予定の大学3年生らの就活が3月から本格的に解禁されました。いくつものステップを経て、ようやく決まる将来の道。その選考結果は学生にとって何よりも気になるものです。
ですが、中には不採用を応募者に通知しない、いわゆる「サイレントお祈り」を行う企業は少なくありません。これに対し、SNSでは「不誠実極まりない」「めちゃくちゃ印象悪い」「不採用でもいいからメールくらいよこしてほしい」などの声も上がっています。
どうして企業は「サイレントお祈り」を行うのでしょうか。また、問題点はないのでしょうか。中村新弁護士に聞きました。
●「サイレントお祈り」に法的問題点はない
企業がサイレントお祈りをする理由としては、①不採用メールを送信する手間と時間を省く②不採用メールに対する抗議を防ぐといったものが考えられます。
サイレントお祈りをされた応募者はさぞ落ち着かない思いでしょうが、サイレントお祈りをしたことに対する法的責任を追及することはできません。
採用への応募は雇用契約の申込みと考えられますが、契約の申込みに対して相手方が承諾をする義務を負わないことはもちろん、何らかの回答を行う法的義務もありません。
●企業側は合否通知について募集要項に明記を
とはいえ、サイレントお祈りを頻発する会社の印象がよくなることはありません。
SNSなどで即座に情報が拡散する現代社会においては、不満・苦情の書き込みが積み重なって企業イメージが著しく損なわれるおそれもあります。
反面、応募者が数百名にまで達するような企業の場合、個別に不採用通知を行う手間とコストも多大なものになります。どのような場合でも不採用通知を送るべきと言ってしまうと、企業にとって酷であることも否定できません。
そこで、募集要項に、「採用者(もしくは第○次選考通過者)に限り、○月○日までに通知します」と明記しておくことが考えられます。募集要項にそのような記載があれば、期限までに通知が来ない場合、不採用であると応募者も理解することができます。
期限まで切ることが難しいのであれば、最低限、「不採用者(あるいは不合格者)に当社から通知を行うことはありませんので、あらかじめご了承ください」という程度のことは募集要項に記載しておくべきでしょう。この程度の記載があるだけでも、一定期間経過後に通知が来なければ不採用であると応募者が推測することができます。
ですが、最終面接で数人に絞ったような段階ならば、採否にかかわらず、きちんと通知を行うことが常識的な対応だと思います。
●企業側に不採用の理由を説明する義務はない
応募者から不採用に対する理由の説明を求められた場合、企業がこれに回答する義務はありません。
したがって、企業側が理由開示の要求や抗議に逐一対応する必要はありませんが、募集要項に、「なお、採否の理由についてご照会があった場合、当社から回答はできかねますので、あらかじめご了承ください」と一言書いておくと、事実上のトラブルもかなり防止できると思われます。