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正社員の2倍、社員食堂のランチ代560円を"強制徴収"されるハケン社員の嘆き「お昼は食べないライフスタイルなのに…」
社食の良し悪しが従業員のモチベーションに影響することも(写真はイメージ。EKAKI / PIXTA)

正社員の2倍、社員食堂のランチ代560円を"強制徴収"されるハケン社員の嘆き「お昼は食べないライフスタイルなのに…」

ある派遣社員の男性から「派遣先で昼食代を強制的に取られる」という相談が弁護士ドットコムニュースのLINEに届いた。

男性によると、派遣先には社員食堂があり、そこでのランチ代として出勤1日あたり560円を必ず取られるという。これは派遣社員の金額で、正社員に対する徴収額は「半額の280円」だそうだ。

男性は昔から昼食を食べないライフスタイル。「昼食は不要です。食べないのに昼食代を徴収されるのはおかしい」として払いたくない旨を伝えたものの、会社側は「みんな要らなくても昼食代は払っている」の一点張りで応じてくれなかったという。

「半額の280円なら、ありえなくもない話ですが、560円は結構な金額です。1カ月で1万1000円も払って、食べたくもない昼食をとらされています。選択の余地がないのも納得できません」(男性)

法的に問題はないのだろうか。職場のトラブルにくわしい山田長正弁護士に聞いた。

●「法的な根拠なく会社が利益を得ていると考えられる」【弁護士の解説】

——「昼食を食べない」社員に対して、出勤すると昼食代(社員食堂の利用に限る)を徴収することに、法的な問題は考えられるでしょうか

食堂を利用しないのであれば、食事代もいらないはずですが、それにもかかわらず食事代と称して一定額を控除することは、法的な根拠なく会社が利得を得ていると評価されうるものです。

このような制度設計の理由は不明ですが、社員食堂の利用履歴を従業員ごとに管理するのが煩雑だという理由も考えられます。そうであっても、食券発券機の設置などの方法によって解決を図るべきであり、社員食堂を利用しない人に不利益を課すべきではありません。

なお、賃金から一方的に控除される方法で昼食代を強制的に徴収されている可能性もあります。

この点、税金・社会保険料などの法律で控除が認められているもの以外を賃金から控除する場合は、労働者の過半数を組織する労働組合か、あるいは労働組合がなければ労働者の過半数を代表する労働者との間で、書面の控除協定が必要です(労働基準法第24条)。

したがって、今回のような食事代は法律で控除が認められているものではありません。この観点からも、派遣元会社側が労働者側と控除協定を締結していなければ、一方的な給与からの天引きとして違法となります。

●基本的には派遣と正社員との間で不合理な差をつけてはいけない

——正社員と派遣社員で昼食代に2倍もの差がつけられていることは問題ですか

今回の派遣社員について、業務内容や責任の程度等の内容を踏まえて、派遣先会社の正社員 との間に不合理と認められる差を設けてはならないという考え方が法律に規定されています。この点、派遣先会社の正社員とまったく同一の職務内容や責任の大きさでなくても構いません。

そのため、食事代の補助に関する取り扱いも、正社員と同等の運用をおこなうべき場合もあり得ます。

なお、派遣社員の待遇決定には2種類の方式が存在します。

(1)派遣先均等・均衡方式
(2)労使協定方式

(1)については、派遣元が派遣先から提供を受けた情報をもとに、「派遣先の正社員の待遇に合わせる」という考え方を踏まえて派遣社員の待遇を決定します。

そのうえで、原則的に、派遣元事業主は、派遣労働者にも、派遣先に雇用される通常の労働 者と同一の食事代の補助をしなければならないこととなります。

(2)については、派遣元が、過半数労働組合または労働者の過半数代表者との間で労使協定を締結し、それを順守している場合、例外的に、派遣社員の労働条件はその労使協定により決定しますが、(1)のような「派遣先の待遇に合わせる」考え方は当てはまりません。

そのうえで、今回のような食事代の補助、すなわち食事手当という賃金未払いのケースでは 、派遣先の事業所が所在する地域において、派遣社員が従事する業務と同じ種類の業務をしている、一般労働者の平均的な賃金を参考にして決められます。

また、労使協定において派遣社員の賃金を定める場合、この一般労働者の平均的な賃金と同等以上の水準としなければなりません。

以上のことから、上記(1)(2)のどちらのパターンであっても、派遣元会社へ待遇の改善をご相談してみてはいかがでしょうか。

プロフィール

山田 長正
山田 長正(やまだ ながまさ)弁護士 山田総合法律事務所
山田総合法律事務所 パートナー弁護士 企業法務を中心に、使用者側労働事件(労働審判を含む)を特に専門として取り扱っており、労働トラブルに関する講演・執筆も多数行っている。

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