新型コロナウイルス感染症の5類移行後、初めての忘年会シーズンを迎え、街はにぎわいを取り戻している。しかし、仕事の忘年会に対しては前向きな意見ばかりではない。ネット上には「行きたくない」「つらい記憶しかない」などの声もあがる。
ある会社員は「上司の酒をつくっていたら、何も食べずに終わった」と語る。参加費は「自腹」だったため、不快感だけが残ったという。
弁護士ドットコムにも「大勢の前でスカートをめくられた」「酔った上司に腕を噛まれ、大きな内出血の跡が残った」などの相談が寄せられている。トンデモ忘年会の実情に迫るーー。
●酒で“凶暴化”する上司たち
アルコールが伴う忘年会の席では、酒に呑まれた人の“問題行動”に悩まされている人もいるようだ。泥酔した上司や同僚に暴力を振るわれ、病院に駆け込まざるを得なかったとの体験談も複数寄せられている。
「社長に無理やりグラスを口に押し込まれ、前歯が欠けた。治療費を請求したところ『歯は生えてくる』と言われた」 「上司に『殺すぞ、死ねや』と暴言を吐かれ、ビンタを4発くらった。打撲し、通院を余儀なくされた」 「泥酔した上司に複数人が暴力を振るわれた。ひとりは頭を怪我して病院に行き、私は物を投げられてメガネが破損しました。上司は記憶がないそうです」
一方、酒の勢いに任せて“10倍返し”にしてしまった人もいる。上司に頭を平手で2回叩かれてヘッドロックされたうえに「やめちまえ!明日から来るな!」と言われた相談者Aさんは、上司を殴り返し、全治3週間の怪我を負わせてしまったという。治療費を請求され、悩んでいるとのことだ。
生命の危機を感じる出来事に巻き込まれた体験談も寄せられている。Bさんは、一気飲みを強要されるなど泥酔するまで飲まされ、後輩の車で帰宅中に嘔吐してしまったという。すると、いきなり道の真ん中に降ろされたとのことだ。「交通量の多い車道です。これって殺人未遂ですか」と尋ねている。
ことばの暴力で傷を負った人も。Cさんは離婚歴があることをネタにされ、泥酔した相手に「離婚するような人間は失格だ、人間失格」などと繰り返し言われたという。周囲には「忘れるしかない」と諭されているが、立ち直れずにいるとのことだ。
●警察のお世話になる人も…
こうした酒席のトラブルが、本業にも影響してしまった人も。相談者Dさんは、女性スタッフを壁に押しつけ、顔を近づけるなどのセクハラ行為に及んでしまった。パワハラやセクハラを理由に、懲戒などの“制裁”を受けたという。
「力ずくで止めようとした先輩にもつかみかかってしまったようです。まったく覚えていませんが、セクハラが原因で自宅待機を命じられています」(Dさん)
ほかにも、酒を飲んだにもかかわらず車を運転して帰ろうとし、警察のお世話になってしまった人からの声も複数寄せられている。
「コンビニのガラスを破損させたまま帰宅しました。免停、処罰はどうなるのでしょうか」 「電柱に激突してしまい、警察のアルコール検査で酒気帯びと言われました」
相談者の多くは「記憶にない」「気づいたら警察にいた」などと綴っている。しかし、被害者からみれば、そのような主張は“言い訳”に過ぎない。「ひき逃げにあった」というEさんは「加害者は会社の忘年会後に飲酒状態で帰宅途中だった。翌日逮捕されたが、賠償請求したい」と相談している。
●珍行事も…強制参加に疑問の声
盛大な忘年会の半ば強制ともいえる余興への疑問の声も寄せられている。
「女装コンテストがあります。各部署からひとりずつ出場しなければなりませんが、立候補者がいないため、くじ引きで強制的に決まり、苦痛です」 「余興では、踊りながら部署と課長のよいところをいわなければなりません」
そもそも、忘年会は就業時間外におこなわれる場合、参加するか否かは労働者の自由だ。それでも「参加しなかった場合は始末書を書かせられる」「参加は強制」などの相談も並ぶ。
ひとり親として働くEさんは、家庭の事情を説明したうえで夜の参加が難しいことを伝えると、子どもを民間の学童に預けるように促されたという。さらに上司に「気に入らない奴はあの手この手で飛ばす」と言われ、対応に悩んでいるとのことだ。
忘年会は本来、ゆく年を忘れ、来る年を気持ちよく迎えるためのイベントであるはずだ。自分がよかれと思ったことが、部下に苦痛を与えている場合もある。自我を忘れて、人生を棒に振ることのないよう気をつけたい。