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名札つけた接客、カスハラ体験談「フルネーム連呼、土下座を要求」「本社に理不尽クレーム」
写真はイメージです(nonpii / PIXTA)

名札つけた接客、カスハラ体験談「フルネーム連呼、土下座を要求」「本社に理不尽クレーム」

カスタマーハラスメント(カスハラ)対策の一環として、8月からタクシーやバスの乗務員が車内に氏名を掲示する法的義務がなくなった。道路運送法などに基づく省令が改正されたものだが、名札に実名を出さない取り組みは企業や自治体にも広がっている。SNSの普及によりインターネット上に実名が晒されるなど、プライバシーの侵害が問題となっているからだ。

弁護士ドットコムでは、この取り組みに対して意識調査(期間:8月10日〜8月29日)を行い、全国の717名から回答が寄せられ、「賛成」「どちらかと言えば賛成」と答えた人が全体の7割超となった。

実際に名札をつけて働く人からは「カスハラは怖い」とする声が多かったが、「カスハラではなく、純粋な苦情や褒めたい投書等もある」として、反対する人もいた。自由回答では「店内で大声でフルネームを連呼されて、最終的には土下座での謝罪を要求された」など、深刻な被害経験談もあった。

アンケートの結果について、詳しくみていきたい。

●「カスハラは怖い」「名前がわからないとクレーム入れることが出来ない」

アンケートではまず、名札に実名を出さない取り組みに対しての賛否を質問した。結果は、賛成が49.8%、どちらかと言えば賛成が23.6%で、賛成意見が7割を超えた。

画像タイトル カスハラ対策の一環として名札に実名を出さない取り組みをどう考えますか?

それぞれの回答の理由について、自由回答で聞いた。

賛成意見

「本名を覚えられると、仕事以外の場面でも厄介なことになったりしそうだから」(40代・女性)

「​​自分も名前を晒して仕事をしているが、やはりカスハラは怖いから」(40代・男性)

「看護師をしていますが、実名フルネーム+顔写真の名札をつけて仕事をしています。経験はしてないですが、よくインスタやTikTokや Twitterに入院中とか、点滴中や病室、看護師の手元を写真や動画にアップしてあるものをみます。患者さんにその気がなくても、こちらの個人情報が出る危険もあるので不快です。逆に実名で働くメリットを知りたいです」(30代・女性)

反対意見

では、反対する人はどう考えているのか。

「名前がわからないとクレーム入れることが出来ないです」(40代・女性)

「自分自身の身を守ることは大事だが、名前を示すことで責任を持って職に当たってもらいたい。カスハラではなく、純粋な苦情や褒めたい投書等もある。フルネームでなくてもいいので、名字だけは示しておく必要があると思う。ニックネームにする意味はない思う」(60代・女性)

「やはり実名を出すことはその企業の信用を表している証ですので続けて欲しい」(60代・男性)

「サービス業側にいる人間です。本当にサービス側に問題があった際の原因究明が困難になります。長期的目線でのメリットを感じません」(40代・女性)

●名札をつけて働いたことがある人の内22%がカスハラを経験

回答者のうち、これまで名札をつけて接客した経験があるという541人に対して、カスハラ被害にあった経験があるかを質問した。

画像タイトル 名札をつけてカスハラ被害にあった経験はありますか?

結果は「ない」と回答した人が最多の65.4%となったが、「ある」とした人は22.4%にのぼり、5人に1人がカスハラ経験に遭遇していた。

では実際にどのようなカスハラがあったのか。経験した人からのエピソードを紹介したい。

「クレーマーに名前を覚えたからな、と言われて、しばらくの間家族もいる身なので恐怖に震えていた」(40代・男性)

「コンビニ店員のアルバイトをしてて客の過剰な要求に応じなかったら罵倒され、その後本社にクレームを入れられ、クビになった」(30代・男性)

「ガソリンスタンド勤務。上司が給油許可出しを端末で操作する際少し遅れ、それを糸口に悪質なクレームを言い始める。20~30分言われた後、こちらに歩いてきて、怖くて返事が小さかった事に言いがかりを言い始め、常識がない、ババア、など暴言を吐かれる」(40代・女性)

「(客が)探されていた商品が欠品中だったのでそれを伝えたところ『こんな遠い店まで来たのになんで無いの!なぁ!聞いてんの!?』と店内で大声でフルネームを連呼されて、最終的には土下座での謝罪を要求されました。途中から写真を勝手に撮られたので警備員から警察に連絡してもらいましたが、警察が来ても『民事不介入』を理由に結局どうすることもできず。写真は悪用された可能性もありますが、どうなったのか知りません。店長も我関せずだったので完全に泣き寝入りしました」(30代・女性)

理不尽なクレームや恫喝をされている方が多いが、中にはストーカー被害にまで発展したケースも。

「休暇の日に探されて、近所で後をつけられた」(30代・女性)

「名指しで接客の指名をされ、執拗に責められた。また、何度もデートに誘われて連絡先を渡された」(30代・女性)

また、実際に困った店員に遭遇した人たちからはこのような意見も寄せられた。

「変な客がいる場合も多いと思うが変な店員もいる」(30代・女性)

「区職員やレジの店員にひどい対応をされたことがあり、反対です」(50代・女性)

「以前、名札を隠した店員に理不尽な対応をされた経験が数回ある」(50代・男性)

このような経験をした人は名札見直しの取り組みに反対の人が多いようだ。

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