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40代男性、不採用を告げる「お祈りメール」で心に深い傷 「今の年齢から無理」と言った企業を訴えられるか?
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40代男性、不採用を告げる「お祈りメール」で心に深い傷 「今の年齢から無理」と言った企業を訴えられるか?

企業の不採用通知は、「社内で検討したところ、ご期待に添えない結果となりました」といったシンプルな内容であることがほとんどだろう。しかし、弁護士ドットコムには「不採用理由で、学歴や職歴、さらには生き様に至るまで否定されうつ気味になった」という相談が寄せられている。

相談を寄せた40代男性は、求人サイトから応募し、経歴と履歴書を送ったところ、数日後に不採用のメールが届いた。そのメールに不採用の理由が長文で記されており、職歴、さらには生き様に至るまで否定する文章が書いてあったという。

男性は「採用になり今後お世話になるのなら100歩譲って我慢できますが、応募の段階で縁もゆかりも無い方に全人格を否定されるような文章を書かれる筋合いはありません」とメールに愕然とした様子だ。

今回、男性は未経験業種に応募していたが、「今の年齢からなるのは無理」など経歴だけでなく未来まで否定されてしまった。「就活中に破壊的ダメージをうけてつらい思いをしております」と吐露している。

この件で相談者はうつ気味で無気力になり、心療内科に通い始めたという。「お祈り」された企業に対し、なんらかの法的な対応をとることができるのだろうか。大木怜於奈弁護士に聞きました。

●企業には採用の自由が認められているが…

まず、労働者の採用に関して、企業には採用の自由が認められています。契約締結の自由とも言われ、憲法上も保障された人権です。判例においても、企業には、経営の自由として、誰をどのような条件で雇うかについて自由に決定することができると判断されています(三菱樹脂事件・最大判昭和48年12月12日民集27巻11号1536頁)。

ただ、企業の採用の自由も無制限に認められるものではありません。例えば、男女雇用機会均等法5条は、性別による採用差別を禁止しています。

そして、いわゆる雇用対策法(「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」)は、原則として、募集・採用時に年齢制限を設けることを禁止しています。

ただし、例外的に、法令の規定により年齢制限が設けられている場合や、長期勤務によるキャリア形成のため、若年者等を期間の定めのない労働契約の対象として募集・採用する場合など、一定の場合には、年齢制限を行うことが許されています。

●企業は損害賠償請求を受けるリスクも

今回のケースでは、具体的な事情は分からないものの、「今の年齢からなるのは無理」であるなどと言われたということです。

年齢制限が認められる一定の例外事由にあたる場合でなければ、年齢制限による違法な採用差別に当たる可能性があります。そうすると、企業は、不法行為に基づく損害賠償請求を受けるリスクもあります。

一方、違法な採用差別に当たらないとしても、不採用の理由を長文で記載する必要性は認められません。

応募者の人格や人生観を否定する内容を記載した場合には、やはり不法行為に該当するリスクがあるため、企業としては、応募者に対する不採用通知の際に、このような応答をすることは厳に避けるべきであると考えられます。

なお、企業は、採用を拒否した場合に、応募者から採用拒否の理由を尋ねられることがありますが、回答する必要はありません。

プロフィール

大木 怜於奈
大木 怜於奈(おおき れおな)弁護士 弁護士法人レオユナイテッド銀座法律事務所
弁護士登録前の会社員としての勤務経験も活かし、ビジネス実態に即したリーガルサポートの提供を心掛け、企業法務においては、「管理法務」を取扱業務の柱として、多様な経営者のパートナーとして、人事労務、営業秘密管理、風評管理など、様々なサービスの拡充に努めております。 また、労働問題にも重点的に取り組み、「企業の人事労務クオリティ向上による従業員に対する真の福利厚生の実現」を目指しています。

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