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月9時間の残業制限で「膨大な持ち帰り残業」うつ病発症した男性が労災認定求め国を提訴
会見に参加した原告の30代男性(2022年11月29日、東京都、弁護士ドットコム撮影)

月9時間の残業制限で「膨大な持ち帰り残業」うつ病発症した男性が労災認定求め国を提訴

アドバンテスト(東京都千代田区)で商品開発をしていた30代男性がうつ病を発症したのは、「持ち帰り残業」による長時間労働が原因だとして、男性が11月29日、国を相手に労災認定を求めて東京地裁に提訴した。

男性によると、同社は2014年10月から残業時間を一人月9時間に制限していた。男性の所属していた部署では、月9時間を超えると個人も所属長も懲戒処分の対象となると通達があったという。そのため、男性は必然的に持ち帰り残業をせざるを得なくなったと主張している。

男性は「会社が残業制限と無理なスケジュールを同時に強制した場合に、今回のような働き方となってしまうのは、決して珍しいことではありません。今回のケースが労働災害に該当しないならば、これは労災保険制度の穴としか言いようがありません」と訴えた。

●持ち帰り残業を否定「私的な能力向上の勉強と峻別することは困難」

訴状などによると、男性は2000年代に同社に入社し、2016年から光超音波顕微鏡の開発に携わった。開発は計画通りに進まず、会社での残業も厳しく月9時間に制限されるなかで、業務を終わらせるため持ち帰り残業をせざるを得なくなった。2017年10月にうつ病を発症。発症前半年の1カ月あたりの時間外労働時間は約96〜214時間にのぼったと主張している。

男性は2018年5月ごろ、行田労働基準監督署に労災申請したが、労基署は不支給決定をした。その後の審査請求、再審査請求も退けられた。

再審査請求は「プロジェクトを遅延させないために必要に応じて持ち帰り残業をすることも含めた、請求に対する包括的な業務指示があった」と認定しつつも、「期限付きの具体的指示が確認できない以上、私的な能力向上の勉強と峻別することは困難」などとして、持ち帰り残業を全て否定した。

代理人の明石順平弁護士によると、過去に持ち帰り残業が労災認定されたケースは複数あるが、ここ数年は「認定が異常に厳しくなっている」という。明石弁護士は「上司は深夜もメールを返していて、プロジェクト管理ツールでも男性が持ち帰り残業していることを把握している。使用者の指揮命令下にあったかどうかは、客観的な証拠をもとに立証することができる」と話した。

男性は「持ち帰りサービス残業の問題は、多くの労働者が泣き寝入りしている現状にあります。会社の管理体制がずさんであればあるほど、立証することが難しいからです。会社が労働時間をあいまいにすればするほど労働災害として認定されなくなることはあってはならない」と呼びかけた。

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