もしパワハラで自主退職扱いになっても、会社でパワハラがあったことを証明できる人が2人いれば会社都合の退職になる——。こんな退職に関するツイートが話題となった。
自己都合による退職と会社都合による退職とでは、失業給付の給付について、給付がいつ始まるかや失業給付を受け取ることができる期間(所定給付日数)など、さまざまな違いがある。
パワハラが原因で離職するときに会社から「自己都合退職」にされてしまっても、証人が2人いれば撤回できるのだろうか。労働問題にくわしい徳田隆裕弁護士に聞いた。
●会社都合退職か否かで大きな違いがある
——会社でパワハラがあったことを証明できれば会社都合退職にできるのでしょうか。
はい。退職者がパワハラの証明ができれば、いわゆる会社都合退職扱いとして、ハローワークで雇用保険の基本手当を受給できます。
まず、自己都合退職した場合、雇用保険の基本手当を受給するためには2カ月の給付制限がかかり、受給までに時間がかかるというデメリットがあります。
次に、会社の倒産や解雇等によって離職する場合をいわゆる会社都合退職といい、会社都合退職した者を、雇用保険法では「特定受給資格者」といいます。
●どんなとき「特定受給資格者」になる?
特定受給資格者に該当すれば、自己都合退職における2カ月の給付制限はなく、自己都合退職の場合よりも早く雇用保険の基本手当を受給できますし、基本手当の給付日数が増えて、支給される基本手当の総額が増える場合があります。
厚生労働省は、特定受給資格者に該当する者として、「事業主又は当該事業主に雇用される労働者から就業環境が著しく害されるような言動を受けたことによって離職した者」を挙げています。
具体的には、「上司、同僚等の故意の排斥又は著しい冷遇若しくは嫌がらせを繰り返し受けたことにより離職した場合」がこれに当たります。
すなわち、上司等から嫌がらせを繰り返し受けるようなパワハラを受けて、退職するに至った場合には、特定受給資格者として、給付制限なく雇用保険の基本手当を受給できるのです。
●「証言者が2人以上」は大きな武器になるが…「確保は容易でない」
——パワハラを受けたことを証明する場合、その方法は証言者2人でよいのでしょうか。
私がハローワークに電話で確認しましたところ、ハローワークは、パワハラを受けて退職したとして、特定受給資格者に該当するかを判断するにあたり、パワハラの事実を証言してくれる証言者が2人以上いれば、特定受給資格者と認定してくれるようです。
もっとも、パワハラの事実を証言してくれる人を確保することが大変なことは多いです。
なぜならば、今も会社に勤務している人の場合、もし退職した人がパワハラにあっていたことを証言したことが会社に発覚したら、「会社から不利益な取扱いを受けるのではないか」ということを懸念し、協力してくれないことが多いからです。
——証言してもらえない場合、どのようにパワハラを証明すればよいのでしょうか。
証言者を確保できない場合には、パワハラの言動を録音したデータ等をハローワークに提出して、ハローワークに調査してもらい、パワハラの事実を認定してもらうことになると思います。
証言や録音等の証拠がない場合には、残念ながら、ハローワークにパワハラの事実を認定してもらえず、自己都合退職扱いになる可能性が高いです。