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「フィギュアの外箱を汚さないで!」フリマアプリでの発送トラブル 「箱も大事」派のお願い、法的にはどうなる?
画像はイメージです(ヤシの木 / PIXTA)

「フィギュアの外箱を汚さないで!」フリマアプリでの発送トラブル 「箱も大事」派のお願い、法的にはどうなる?

フリマアプリを通じて購入した品物が収納してある箱に、アプリサイトの専用袋が直接貼り付けられていたことを嘆く投稿が、ツイッターであった。

〈メルカリでセルフィギュアを購入したら箱に直接専用袋を貼り付けて発送された…ショック〉

購入者が売り主に「普通フィギュアを送る際にダンボールに入れて発送すると思うのですが?」と返信すると、「申し訳ありませんが、フィギュアを発信するのは初めて」と回答があったという。

フィギュアなどのお目当ての購入物だけでなく、入れてある箱も大切にとっておきたい派だという購入者としては、箱も商品の一部という認識だったのだろう。

フリマアプリでの取引は個人間でおこなわれるため、梱包などの対応も販売店のようにしてくれるとは限らない。購入商品を入れるための箱に傷をつけてしまった場合、どのような法的責任が生じるのだろうか。大橋賢也弁護士に聞いた。

●一般的には「売買契約の目的物に箱は含まれない」が…

——購入商品を入れるための箱は、法的にはどのように扱われますか。

売買契約は、目的物と代金額を合意した上で成立します。したがって、箱が売買契約の目的物に含まれるのかどうかは、当事者がどのように考えていたかによります。

一般的には、売買契約の目的物は、箱の中に梱包された物自体であり、箱は目的物には含まれないと解して良いと思います。箱は梱包された物を傷つけないための道具であり、買主はそれ自体に価値を見いださないと考えるのが合理的と考えられるからです。

もっとも、売買契約の当事者が、箱も売買契約の目的物と合意することもあり得ます。その場合は、後日のトラブルを防止するためにも、当事者は、売買契約の締結過程で、箱も売買契約の目的物とすることを明確にしておくべきでしょう。 

——セルフィギュアなどコレクター性が比較的あるとされる物の場合、「入れてある箱も大切にとっておきたい派」の方が少なくない印象です。購入商品がどのような物なのか、購入者がどう考えているのかという要素は、どのような意味を持つのでしょうか。

買主がどのように考えているのかということは、売買契約の目的物が何であるのかを解釈する上で重要な要素になってきます。また、売主がどのように考えていたのかということも重要な要素になります。

今回のケースでは、売主は、箱を重要な物とは考えておらず、売買契約の目的物はフィギュアだけと考え、買主は、箱を重要な物と考え、売買契約の目的物はフィギュア及び箱と考えていたようです。

このように、当事者の認識にずれが生じている場合は、慣習や取引慣行を参考にして、当事者が目的物についてどのように理解するのが合理的かを判断していくことになります。

フィギュアの売買契約を締結する際、フィギュアだけでなく箱も目的物とする慣習や取引慣行があるのかどうか、それを参考に、当事者が目的物についてフィギュアだけでなく箱も含むと考えていたとするのが合理的かどうかで判断していくことになると思います。その際には、箱の形状等も考慮に入れることになると思います。

●事前に目的物や送付方法を明確にしておくべし

——今回のようなケースの場合、納得いかない購入者としては何かとりうる手段等はあるのでしょうか。

今回のケースで、箱も売買契約の目的物に含まれると仮定した場合、売主が箱に直接専用袋を貼り付けてしまい、容易に剥がせない状況を作り出してしまったとしたら、理論的には契約不適合責任(民法562条1項)を主張することができると思います。

つまり、引き渡された目的物(箱)が、品質に関して契約の内容に適合しないものとして、代替物の引渡や代金の減額を請求することになります。個人間売買においては、代替物の引渡は現実的ではないでしょうから、実際には代金の減額請求をすることになると思います。ただし、いくらの減額を請求するのかというのは別途難しい問題になるでしょう。

今回のようなトラブルを防ぐためには、売買契約の締結過程において、目的物や送付方法について明確にしておくことです。たとえば、今回のようにフリマアプリで商品を購入しようとする際には、事前に売主側に対して、箱もそのままの状態で送って欲しいという希望を伝えておくとよいでしょう。

この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいています。

プロフィール

大橋 賢也
大橋 賢也(おおはし けんや)弁護士 川崎エスト法律事務所
神奈川県立湘南高等学校、中央大学法学部法律学科卒業。平成18年弁護士登録。神奈川県弁護士会所属。離婚、相続、成年後見、債務整理、交通事故等、幅広い案件を扱う。一人一人の心に寄り添う頼れるパートナーを目指して、川崎エスト法律事務所を開設。趣味はマラソン。

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