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出張帰りの新幹線でビールを飲んだら、会社の規則違反になるってホント?
新幹線の車内

出張帰りの新幹線でビールを飲んだら、会社の規則違反になるってホント?

「出張帰りの新幹線でノンアルコールビールを飲むことは、飲酒禁止との就業規則への違反になってしまうのでしょうか」という相談が弁護士ドットコムに寄せられました。

相談者の男性は、出張先での業務を済ませ、帰りの新幹線の車内で駅弁とノンアルコールビールを味わっていました。酒気帯び状態での勤務は就業規則で禁止されていますが、男性は帰宅時については書類作成などの業務命令を特に受けていませんでした。

今回の相談はノンアルコールビールですが、新大阪駅や東京駅などでは、出張帰りの会社員が飲酒している光景はありふれたものになっています。

しかし、就業規則で飲酒を禁止している会社で、出張帰りの新幹線で飲酒することは、違反行為になってしまう可能性があるのでしょうか。ノンアルコールでもダメなのでしょうか。山田長正弁護士に聞きました。

●特別な業務指示がない限り、就業規則違反にならない

ーー出張帰り(帰宅途中)の飲酒は就業規則違反となるのでしょうか。

就業規則は、原則としては、労働者の労働時間外まで干渉できるものではありません。

労基法上の「労働時間」とは、「労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間」をいい、これに該当するか否かは、就業規則等の定めや、タイムカードの打刻等にかかわらず、実態から個別的・客観的に判断します。

一般的に、所定労働時間外の出張の移動時間について(以下、今回のケースも同様であることを前提とします)は、その途中に特別の業務指示を受けたものでない限り、通勤退勤の時間と同じく、労務提供場所との間を移動しているだけですので、「労働時間」ではありません。

そのため、このような特別な業務指示がない限り、「労働時間」には該当せず、就業規則の拘束力が及ばないため、出張帰り(帰宅途中)の飲酒は、就業規則違反とはならないと考えます。

ーーもし、会社から何らかの業務を指示されて、新幹線でやむを得ず仕事をする場合に、嫌気がさして飲酒したら、就業時間中の飲酒となってしまうのでしょうか。

出張の移動時間中に特別の業務指示を受けた場合、労働者が使用者の指揮命令下に置かれており、賃金が発生する「労働時間」に該当する以上、就業時間中の飲酒となります。よって、就業規則の効力が及び、飲酒は就業規則違反となります。

●ノンアルコールの場合、就業規則に具体的な記載があるかどうか

ーーノンアルコールについても、結論は同じでしょうか。

例えばノンアルコール飲料を会社内で飲用した場合を想定してみますと、外観や香りはビールそっくりですので、他の社員へ悪影響を及ぼし、職場秩序や風紀を乱す可能性があります。また、社外からの来客があった際に会社の名誉・信用が失われたりする可能性もあります。よって、就業規則違反になる可能性はあります。

ただしこの場合でも、「職場秩序や風紀を乱す行為」「会社の名誉・信用毀損」という就業規則の抽象的な記載や、会社における「酒気帯び状態での勤務の禁止」という記載だけでは、就業規則違反の有無について争いが生じる可能性があるため、特にノンアルコール飲料の場合にも禁止する旨は、具体的に就業規則に明記すべきです。

就業規則にノンアルコール飲料も禁止される具体的記載があれば、出張帰りの飲用は、先ほど説明したビールの場合と同様、移動中に特別の業務指示を受けている場合は、就業規則違反となります。

しかし、今回のケースの場合、ご相談者の方の会社には、まだノンアルコール飲料を具体的に禁止する記載まではないようです。

そうしますと、「職場秩序や風紀を乱す行為」や「会社の名誉・信用毀損」に当たるかが問題となります。

この点、形式的には、これらの就業規則違反になる可能性はありますが、実際に他の社員への影響がなく職場秩序を乱していない場合や、第三者からのクレームがなく会社の名誉・信用を毀損していない場合等であれば、実質的には就業規則違反はないと評価されるべきです。あるいは、仮に就業規則違反とされても、相当性を欠く等として、懲戒処分までは無効になるでしょう。

この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいています。

プロフィール

山田 長正
山田 長正(やまだ ながまさ)弁護士 山田総合法律事務所
山田総合法律事務所 パートナー弁護士 企業法務を中心に、使用者側労働事件(労働審判を含む)を特に専門として取り扱っており、労働トラブルに関する講演・執筆も多数行っている。

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