退職告げたら、パワハラ店長が「辞めるなら採用サイトの費用を払え!」 応じる義務はあるの?
退職トラブルは多い(mits / PIXTA)

退職告げたら、パワハラ店長が「辞めるなら採用サイトの費用を払え!」 応じる義務はあるの?

パワハラでバイトを退職しようとしたところ、採用のきっかけとなったアルバイト募集サイトの費用を支払えといわれてしまった。そんな人から、本当に払わなくてはいけないのかという相談が弁護士ドットコムに寄せられました。

相談者は、バイト先が契約書の労働時間を守らないばかりか、関係者に朝まで連れ回され、暴言や暴行を伴う説教を受けたことなどから退職を決意したといいます。

ところが、退職届を出しに行くと、店長は紙を持ってきて「親の名前と実家の住所と電話番号をかけ」といわれ、さらに、「採用にかかった4万4000円を給料日後に持ってこい」ともいわれたそうです。

相談者が採用されるきっかけは、あるバイト募集サイト経由で応募したことでした。店長がいう「採用にかかった4万4000円」とは、相談者が採用が決まった際に、このサイトに店が支払った金額をさすようです。

相談者は、払うとしても4万4000円は高すぎる上に、そもそも原因はバイト先にあるため、支払いたくないと考えています。相談者はどう対応するべきなのでしょうか。徳田隆裕弁護士に聞きました。

●支払う義務は?

ーー退職にあたってトラブルになることは珍しくありませんが、今回のケースで相談者は自身の採用コストとなった4万4000円を支払う義務があるのでしょうか。

結論としては、相談者は、会社に対して、採用サイトの費用4万4000円を支払う必要はありません。

まず、労働者には、退職の自由が認められていますので、退職にあたり会社の承諾は不要であり、退職届を提出してから2週間が経過すれば、自由に退職できます。

週休二日制の会社であれば、2週間のうち10日間の平日について年次有給休暇を消化すれば、会社に出勤することなく、退職することができます。

ーー退職するにあたって、会社側の損害賠償請求が認められる可能性はありますか

労働者が会社を退職しようとすると、会社が労働者に対して、損害賠償請求すると脅してくることがありますが、労働者が退職したことを理由とする会社の損害賠償請求が認められることはほとんどありません。

労働者が退職したことを理由とする会社の損害賠償請求が認められるためには、労働者の退職が不法行為に該当する必要があります。

不法行為とは、ある人が他人の権利や利益を違法に侵害する行為で、(1)権利・利益侵害、(2)加害行為、(3)故意・過失、(4)損害の発生、(5)因果関係、の5つの要件を満たす必要があります。

先ほど説明したとおり、労働者には退職の自由が認められており、労働者が会社を退職することは、違法ではありません。そこで、相談者の退職は(1)会社の権利や利益を侵害しておらず、(2)加害行為をしていないことになります。

また、会社は人材を採用するために、採用サイトに必要経費を支払っています。しかし、採用サイトではなく、ハローワークを利用して求人の募集をすることもできるわけですから、労働者が退職したからといって、採用サイトへ支払った費用が、(5)因果関係のある(4)会社の損害になるとは考えられません。

さらに、今回の相談者は、パワハラを受けたことが退職理由になりますので、退職するにあたり、(3)過失がないといえます。

このように、労働者が退職したことを理由とする会社の損害賠償請求は、不法行為の要件を満たさないため、認められないことがほとんどなのです。

会社を退職する際に、会社から損害賠償請求をすると脅されても、認められることはほとんどありませんので、脅しに屈することなく、自由に退職するようにしてください。

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