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未払い賃金の請求期間が「3年」に延長も、「本来は5年にするべき」法制度の矛盾への指摘
写真はイメージです(HHImages / PIXTA)

未払い賃金の請求期間が「3年」に延長も、「本来は5年にするべき」法制度の矛盾への指摘

残業代などの未払い賃金の請求期間を現行の2年から当面3年に延長する改正労働基準法が、3月27日の参議院本会議で可決・成立し、4月1日から施行された。

民法改正によって「使用人の給料」に関する短期消滅時効が廃止されることに伴い、労働者が残業代などの未払い賃金を企業に請求できる期間を延長するというものだ。

具体的に、法改正により、使用者・労働者にどのような影響があるのだろうか。また、「3年」という期間は妥当といえるのか。竹之内洋人弁護士に聞いた。

●「5年後には本則の5年にすべき」

ーーそもそも、なぜ今回の法改正で期間を延長することになったのだろうか。

「もともと民法では、給料の時効期間は1年とされていました。そこで、労働者保護の観点から、労働基準法(以下、『労基法』)で賃金の消滅時効期間を2年としていました。

ところが、今般の民法改正で民法上の消滅時効期間が5年となったことにより、労基法の規定の方が短くなるという逆転現象が生じてしまいました。そこで、このたび労基法の規定も時効期間を5年に延長したのです」

ーー未払い賃金の請求期間は本則では「5年」となっているが、企業経営への影響を考慮して当面は「3年」とされる。当面の措置とはいえ、「3年」は妥当といえるのか。

「5年後には状況を勘案しつつ必要な措置を講ずるとはされていますが、その時には必ず本則の5年にすべきだと思います。

3年では労働者保護法である労基法が一般法である民法よりも労働者に不利な定めをしていることになります。法制度上の大きな矛盾というべきものです」

●労働者側・使用者側への利点は?

ーー当面の間は「3年」となるが、今回の法改正によって労働者側・使用者側それぞれにどのような利点があるといえるのだろうか。

「今年4月以降に支払日を迎える賃金については、時効期間が2年から3年に延びることになります。そのため、2022年4月以降は未払残業代等として請求しうる金額が従前より増えるという点については、労働者側にとって一歩前進といえるでしょう。

他方で、使用者側にとっては、一時に請求される残業代等の額が増え、従来よりも大きな経営上のリスクになります。そのため、普段から適正な賃金支払をしておくことへの意識改革のきっかけとなることを期待したいです」

プロフィール

竹之内 洋人
竹之内 洋人(たけのうち ひろと)弁護士 公園通り法律事務所
札幌弁護士会、日本労働弁護団員、元日本弁護士連合会労働法制委員会委員

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