野村ホールディングスが、新卒採用の面接を担当する社員向けに、性的マイノリティである「LGBT」の基礎知識を学ぶガイダンスを実施したと日本経済新聞が報じている。さらに、管理職の研修や新入社員のガイダンスでも、LGBTについての会社の取り組みを説明しているそうだ。
ゴールドマン・サックスやドイツ銀行グループ、英バークレイズなど外資系金融機関の日本法人もLGBT支援を打ち出しており、こうした外国企業の取り組みも、日本企業に影響を与えているようだ。
企業には、どのようなLGBT対策が望まれるのか。今後、こうした企業の取り組みは増えていくのだろうか。LGBT当事者からの相談を多く受けつけている藤元達弥弁護士に聞いた。
●社員に「LGBT」について知る機会を与えるべき
「現在の日本では、ほとんどの人は、社会の中にLGBTが一定程度存在することを認識していません。
そのため、企業としては、LGBTに関する社内研修を行ったり、セクハラ防止研修の際に、LGBTにとってセクハラとなる事例を紹介したりして、社員にLGBTについて知る機会を与える必要があります」
藤元弁護士はこう語る。そのうえで、次のような制度が望まれると指摘する。
「社内の制度において、LGBTとそれ以外の人を実質的に同等に扱うようにすべきです。
たとえば、同性間のパートナーシップに対して、配偶者手当や結婚祝い金の支給、慶弔休暇の取得を認めたり、社宅の入居について、異性間の婚姻と同様に認めるといった方法があります」
企業がLGBTへの配慮をすることのメリット、また配慮しないことによるデメリットとして、どのような点があるだろうか。
「LGBTに配慮するメリットとしては、多様性を尊重する、進んだ会社というイメージを社会に発信できることや、優秀な人材採用の可能性が高まることなどが、あげられるでしょう。
配慮しないデメリットとしては、LGBTについて知らない社員が、外部で無意識にLGBTに関する差別的発言をしてしまうことで、会社のイメージを悪化させることが考えられます。
また、社内でLGBT社員に対するハラスメントが生じた場合、会社が何ら対策をしていなかったときは、会社に損害賠償責任が生じる可能性もあります。
渋谷区が同性パートナーシップ証明書の発行を開始し、世田谷区も同性カップルについて、パートナーシップ宣誓書の受付を開始するなど、LGBTに関する社会の関心は高まっています。今後、企業の取り組みも増えていくことが予想されるでしょう」