職場の上司や同僚女性から「ヒゲを剃れ」と言われるのは差別だ――。はてな匿名ダイアリーに投稿された文章が話題になっている。
投稿者の男性は「世の中では不潔と思われているからというが、別に不潔でもなんでもない。ちゃんと毎日顔を丁寧に洗っているし、朝風呂にも入る。単なるイメージやステレオタイプだ」と訴える。
さらに、「なぜ『だらしない』やら『ちゃんとしなさい』やら言われないといけないのか。子供の頃から体毛が濃く、辛い思いをしてきた人間からとすると、体毛が生えていると不潔と言われるのは甚だ不当だと怒りが湧く」と綴っている。
このように感じている人がいるにもかかわらず、もし、会社が「ヒゲを剃る」ことを従業員に強制した場合、差別にあたるのだろうか。河野祥多弁護士に聞いた。
●一律の「ヒゲ不可」は差別にあたる?
「会社が、労働者のヒゲなどの身だしなみを制限することは、個人の自由に制限を加えるものです」
河野弁護士はこう切り出した。ヒゲ剃りを強制したら、差別にあたるのだろうか。
「個人の自由にまでおよぶ制約は、
(1)業務遂行上の必要性が認められること
(2)労働者の自由を過度に侵害しない合理的なもの
でなければなりません。
男性の業種や職種、ヒゲの生やし方などは不明ですが、これらの要素を一切考慮せずに、一律に男性のヒゲを不可とする場合、『合理的な制約』とは認められません。
したがって、このように合理的な制約と評価できない制約は、差別と評価される可能性があります」
●パワハラやセクハラに該当するケースも
差別以外にどんな問題があるのだろうか。
「合理的な制約と認められない場合、上司が『ヒゲを剃れ』と言ったり、職場での権力・優越的地位などを利用した『嫌がらせ』をおこなったりしたら、そのこと自体がパワハラやセクハラに該当する可能性があります。
また、ヒゲを剃らせることが合理的な制約と認められる場合でも、言い方によっては、パワハラやセクハラに該当しうることになりますので、指導をする際には気をつけなければなりません。
ほかの従業員が問題のある発言をしている場合には、是正する必要もあります」
トラブルを避けるために、会社側はどのような点に気をつけるべきなのだろうか。
「職種などに応じて、身だしなみを制限する『服務規程』を作ったり、指導する際には感情的にならずに冷静にきちんと説明をすることが大切になるでしょう」
河野弁護士はこのように述べていた。