久しぶりに仕事が早く終わった。今日は家に帰ってゆっくり・・・と思ったところへ、上司から飲みの誘い。むげに断ることもできず、げんなりするばかり――。そんな風に感じる人が増えているのかもしれない。
酒造会社「宝酒造」の意識調査によると、新社会人と上司で、飲み会に対する意識に大きな違いがあらわれた。上司に誘われた飲み会に行く理由について、新社会人の6割超が「お酒を飲みに行くのも仕事だと思うから」と回答。一方、若手社員を指導する上司は、部下が誘いに応じる理由について、過半数が「酒を飲む雰囲気が好きだから」と答えたのだという。
そもそも、上司から誘われた飲み会は「仕事」にあたるのだろうか。そんな飲み会に誘われた部下は、会社に残業代を請求できるのか。労働問題にくわしい岩井羊一弁護士に聞いた。
●ポイントは「指揮命令下」にあるかどうか
「仕事関係の飲み会の時間が『労働時間』になるかどうか、という問題ですね」
このように岩井弁護士は語り始めた。
「残業代を請求できる労働時間とは、『使用者(会社)の指揮命令下に置かれている時間』のことをいいます。
労働時間にあたるかどうかは、参加する人の主観ではなく、客観的に決まるとされています」
どんな風に決まるのだろうか?
「決め手となるのは、参加者が『上司の指揮命令下』にあるかどうかです。参加が業務命令である飲み会は仕事と考えられ、残業代請求の対象になります。
たとえば、接待のために参加を命じられた場合、仕事となる可能性があります。飲み会であっても仕事とみなされ、残業代が請求できるケースはありえます」
すると、上司に飲み会に誘われる、冒頭のようなケースでも、残業代はもらえる?
「そちらは難しいでしょう。『むげに断ることもできず』と言っていることからすると、部下も一応断ることができるようですからね。
さらに、仕事が終わったあとの誘いであれば、仕事の話ばかりするとも考えにくいですね。そうなると、私的な飲み会とみなされる可能性が高いでしょう。
私的な飲み会は、仕事とは見なされず、当然ながら残業代も出ません」
●部下に「仕事」と思わせるような飲み会はダメ?
そうなると、部下も行きたくなければ断ればいいのだ、ということか?
「そうですね。部下は、断りたいときは堂々と断るべきです。多くの場合、上司と飲みに行くのは法律的に仕事のうちに入らず、残業代の請求ができないのですから」
岩井弁護士はこのように述べたうえで、上司にも次のようなアドバイスを行っていた。
「部下が『仕事のうち』と感じるような飲み会で、上司と部下の人間関係がよくなることはないでしょう。上司は『飲み』に頼らず、仕事を通じて、職場の人間関係の構築をしたほうがいいと思います」